テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1369話】「白い馬」 2026(令和8)年1月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1369話です。

 あけましておめでとうございます。今年はうま年ですが、お釈迦さまには長年一緒に過ごしたカンタカという白い馬がいました。奇遇なことにお釈迦さまと同じ日に生まれました。更にその馬の世話をしていた御者のチャンダカも同じ日に生まれています。お釈迦さまは釈迦族の王子として生まれ、カピラ城に住んでいました。17歳の時ヤショーダラと結婚。ラーフらラいう子どもも授かりました。そのように恵まれた環境にありながら、生老病死という人生の苦しみから解放されるためにはどうしたらよいのか、悩む日々を送っていました。

 とうとう29歳の時、王子という地位も妻子も捨て、出家する決意をします。皆が寝静まった夜中に愛馬カンタカに乗り、御者のチャンダカを伴い、城を抜け出します。王子がいなくなれば、城中が大騒ぎになることは目に見えているので、チャンダカはためらいますが、王子の決心が固いことを悟り、東へ向かいました。

 アーマー河で頭を剃り、修行僧の出で立ちになり、悟りを得るまで戻らぬ決意を示します。そして身につけていた宝石や衣装をチャンダカに預け、城に戻って王さまに出家の経緯を伝えるように命じます。その時、愛馬カンタカは、涙を流し王子の足元を舐めて、別れを惜しみました。お城に帰ってからは、すっかり元気をなくし、絶食をして、とうとう死んでしまいました。カンタカはお釈迦さまに愛され、修行への道を案内したとして、天界に生まれたとされています。確かに白い馬は神の馬、神馬(しんめ)と尊ばれることがあります。

 それより以前に、白い馬はインドに伝わるお釈迦さまの前世物語に出てきます。一艘の船が難破して、島に流れ着きます。そこは夜叉と言われる人食い鬼の住み家でした。夜叉は人間に化けて、船員たちをもてなし、楽園のような生活を提供します。全ては食い殺そうという魂胆があってのことです。それに気づいた船長が、皆を説得し逃げようとしますが、多くの者は楽で快適な暮らしを捨てる気はありません。船長が困り果てていると、どこからともなく1頭の白い馬が現れました。「私には天空を飛び駆ける神通力があります。今のような安易な生活を捨てて、人間界に戻りたい者は私に乗りなさい」と言って、怠け癖から目覚めた者たちを、それぞれの住まいに送り届けました。

 王子さまを恵まれた生活から悟りの道へと案内した白馬のカンタカ。楽をして怠惰な生活に染まった者を普通の人間界に戻したお釈迦さまの前世にたとえられる白馬。白馬は私たちを幸せに導く象徴なのかもしれません。人間に希望を与えるために白馬は駆ける、テレホン法話を聴くため電話を掛ける人は夢が叶うと思って、今年もテレホン法話によろしくお付き合いください。

 それでは又、1月11日よりお耳にかかりましょう。

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