テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1367話】「安青錦」 2025(令和7)年12月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1367話です。

 野球の本場アメリカで、アメリカ人以上の活躍をする日本人の大谷翔平。一方、国技である相撲では、ウクライナ出身の安青錦(あおにしき)が、九州場所で初優勝を果たし、大関に昇進しました。

 安青錦の祖国ウクライナにロシアが侵攻し始めたのは、3年前の2022年のこと。出稼ぎをしていた母を頼って、ドイツに避難しました。しかし7歳で始めた相撲の稽古がままなりません。そこで、相撲の国際大会で知り合った関西大学相撲部コーチの山中新大(あらた)さんを頼って、その年の4月に日本に避難しました。縁に恵まれ12月には大相撲の安治川部屋に入門します。翌年9月の秋場所には初土俵を踏むことになります。

 そして、初土俵から1年半余りの今年春場所、最速タイ記録の所要9場所で新入幕。秋場所は新小結、九州場所は新関脇昇進というスピード記録を打ち立てます。更に初優勝という破竹の勢いです。しかもインタビューに答える日本語の巧みさには、誰もが驚いています。来日してわずか3年半の外国人とは思えません。大谷選手は通訳が付きますが、安青錦は通訳なしで、方言も理解できるとか。

 まだ10代で単身異国に渡り、異文化の極みともいえる相撲界に飛び込んだ覚悟は、並大抵ではありません。その上日本人以上に日本人らしさを身につけているのは、素直さがあればこそです。日本のことも相撲界のことも分からないから、ともかく教えられたこと、見たこと聞いたことを素直に覚えて来たのでしょう。その象徴的はことが、立ち合いの姿勢にあります。仕切り線にきちんと両手をついて、相手の立ち合いを待ちます。これほど基本に忠実な力士は珍しくなりました。片手をちょっと落としただけで、フライング気味に立つ力士も少なくありません。低い姿勢からの瞬発力は、安青錦の強さの原点でしょう。

 さて、格闘技と言われるボクシングやレスリングは、四角い中で戦います。相手を打ちのめすまで戦うこともあります。いかにも角がある戦いです。相撲は丸い土俵です。しかし、角の力・角力(かくりょく)と書いて角力(すもう)と読みます。ここでの角は「くらべる」という意味なのです。だから角力は力比べであると認識すれば、押し出して勝敗が決したなら、更にダメ押しの如く土俵下に叩きのめすようなことは慎まなければならないのです。敗者をも思いやる土俵のような丸い心が肝要です。

 山中さんが相撲の国際大会で安青錦に興味を持ったのは、敗れて泣く対戦相手に歩み寄り、手を差し伸べる姿を見たからと言います。丸い土俵は、相手を思いやる角のない丸い心の力士を強くします。謙虚な心は低い姿勢を貫き、相撲に勢いをつけます。これからも安青錦は懐の深い力士となることでしょう。

 ここでお知らせいたします。11月のカンボジアエコー募金は、1,213回×3円で3,639円でした。ありがとうございました。それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

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