テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1361話】「四足走行」 2025(令和7)年10月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1361話です。

 人類の祖先である類人猿が約700万年前に樹上生活から地上に降り、二本足で歩くようになったと言われています。この長い歴史を経て、走る速さも進化しています。現在人類最速の100㍍の世界記録は、2009年にウサイン・ボルトが出した9秒58です。

 この二本足進化に逆行するかのように、両手両足を使う「四足走行」の記録に挑んだ人がいます。9月24日鳥取県米子市の米江龍星(よねえりゅうせい)さん22歳が、100㍍を14秒55で走り、2022年にアメリカで作られたギネス世界記録15秒66を破りました。彼は中学2年の時、「四本足で走る動物は足が速い」という理科の先生の言葉を聞いて、四足走行に関心を抱きました。以来毎日のように登山道や砂浜で練習を続けました。時には動物園で猿の動きを研究し、猫の走り方も参考にしたと言います。

 映像を見ると、足より腕が短いので前かがみになり、直角に折った腰が高く、長い足を繰り出すのは、いかにも窮屈そうです。普段の生活ではなくてはならない両腕が、ハンディになっているかのようです。それでも彼は「人間で1番になったので、次は動物にも勝てるように特訓を重ねたい」と言っています。

 さて、ウサイン・ボルトの100㍍の世界記録は、時速に換算すると45キロです。サラブレッドは時速88.5キロ、最速の動物といわれるチーターは、120キロにもなるそうです。四足走行の動物は人間の2倍も3倍もの走力を発揮することができます。だから動物と四足走行を競争するのは無駄だとは言いません。そのロマンは人類の原点を見直す切っ掛けになるかもしれません。

 そもそも二本足で歩くようになったのは、食料や資源を運ぶためと言われます。四本足では、物を運ぶのに効率はよくありません。両手が使えるようになって、たくさんのものを持ち運ぶことができるようになりました。更に両手は道具を作るという画期的な進化を遂げます。それが高じて自分だけがたくさん物を集めたいという独占欲も芽生えてきます。究極は立って歩くことにより、重い頭を支えることができ、脳が発達しました。そして我々人類だけが言語を駆使することができるようになったわけです。

 その結果、分をわきまえない言動が見られるようになりました。美しい花を見て、ただその美を愛でるなら自然な姿です。しかし、道具を使って根こそぎ掘り起こし、誰かに売って金儲けをするような自然破壊の振る舞いは人間の驕りです。また両手で武器を作り、我を主張し争いを始めたのも人間の我がままです。今さら四本足に戻れとは言いませんが、せっかく進化した両手を人類の幸せのために役立てないと、手も付けられない人類の未来を招きかねないと四足走行見て感じました。

 ここでお知らせいたします。10月26日(日)午後1時30分より、第19回テレホン法話ライブを開催します。法話に因んだピアノ演奏・御詠歌や映像も加えたライブです。入場無料。
 
 それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。

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