テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1356話】「平和の鐘」 2025(令和7)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1356話です。

 「弾(たま)となり人殺せしか我が寺の供出させられし釣り鐘は」広島県のある住職さんの歌です。先の戦争で、金属類回収令で多くの寺の鐘が供出させられました。徳本寺の旧釣り鐘堂の梁には鐘を釣っていたと思われる穴だけが開いていました。鐘はお国のためになったのでしょうか。

 お寺の鐘は平和の象徴と言ってもいいでしょう。それが供出という運命を辿るとは・・・。現在の徳本寺の鐘は、昭和35年に篤信者により寄進されたものです。その方は供出で鐘がなくなったいくつかの寺に鐘を寄進されていました。鐘に刻まれた寄進銘には「一ツニハ祖先ノ菩提ヲ弔ヒ 一ツニハ世界平和祈念ノ為 願ワクバ大鐘(おおがね)ノ響キニヨリ萬民受苦ヲ抜キ 祖先及ビ萬国諸精霊安就センコトヲ 合掌」とあります。この言葉を胸に刻み、毎朝6時に鐘を撞いています。

 鐘と言えば教会にも付き物です。やはり平和や幸福の願いを響かせています。そして供出とは別の運命で、戦争の犠牲になった教会の鐘があります。長崎市にある浦上天主堂の鐘です。原爆投下により天主堂は倒壊しました。2つの塔からなる天主堂には1対の「アンゼラスの鐘」がありました。南側の塔の大きな鐘は元の姿のまま見つかりましたが、北側の小さい鐘は割れていました。天主堂は昭和34年に再建されたものの、小さい鐘は復元されませんでした。

 一昨年アメリカの社会学者ノーランさんが長崎を訪れた時、潜伏キリシタンの子孫で被爆2世の森内さんと出会いました。天主堂の片方の鐘がないことを教えられました。ノーランさんは原爆開発計画に参加した医師の孫に当たり、その時の医師の役割を検証した本を執筆していました。「何かできることはないですか」と、森内さんに尋ねます。森内さんは、アメリカのカトリック信者による鐘の復元を提案しました。自分の父は被爆者、相手の祖父は原爆計画に参加した人、何か縁があると思ったからです。

 ノーランさんはアメリカに戻り、早速各地の教会や大学を巡り、潜伏キリシタンの苦難の歴史や原爆の被災状況を伝え、資金提供を呼びかけました。多くの信者の協力により、終戦80年の節目に復元が叶いました。今年の長崎原爆の日に、二つそろった鐘の音色が響き渡りました。アメリカからすれば、和解と許しへの願いとなる鐘であり、長崎では連帯と愛の表現と受けとめているようです。鐘の中身は空っぽです。一切のわだかまりがなくなった状態とも言えます。だからこそ、180度違う立場の人々を共鳴させる力もあるのでしょう。

 寺の鐘に話を戻せば、鐘には乳首のような乳(ち)という突起した装飾があります。音響効果を高めるためのものですが、108個あり煩悩の数です。戦争は煩悩にブレーキが掛けられなくなった状態です。鐘の音を聴いたら煩悩を制御しなさいというまさに警鐘と思い、日々心穏やかにして平和を願いましょう。

 それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。

 

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