テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1341話】「復興というコマーシャル」 2025(令和7)年3月21日~31日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1341話です。

 今年1月フジテレビは不祥事により、番組のスポンサーに続々撤退されました。そのようなテレビで企業や商品を売り込むのは、イメージダウンになるという判断からです。空いた枠はACジャパン公共広告機構のコマーシャルで穴埋めをしました。

 ACジャパンといえば、東日本大震災の時を思い出します。あの時も、普通のコマーシャルがなくなり、ACジャパン一色になっていました。たくさんの人が亡くなり、家屋や家財道具など、ありとあらゆるものが流されたり破壊されたりして、瓦礫と呼ばれたのです。地獄のような光景が広がっていました。避難所では一本の割りばしを折って使い、ギリギリの食事をしなければならないのです。そんな惨い現実に向かって、生命保険や電化製品・自動車、住宅や食品などの華やかなコマーシャルを流したら、逆宣伝もいいところでしょう。そのような配慮で、一般のコマーシャルは自粛したわけです。

 大震災1週間で1万3千本以上のACジャパンのコマーシャルが流れたそうです。もっとも、大震災から1週間以上は停電状態でしたので、私はテレビもラジオも視聴することはできませんでした。その後もしばらくニュース以外の番組はなかったような気がします。お笑いや歌舞音曲の番組も控えていました。

 ある人が言いました。「普通のことが普通でなくなり、普通でないことが普通になった」。まさにその通りです。時にはしつこい、やかましいと思うことのあるコマーシャルが消えるなど普通ではありません。私が毎日遺体安置所や火葬場に通って供養のお勤めをしたことも異常ですが、その時カーラジオから流れて来るニュースは、死んだ、壊れた、流されたという情報ばかりでした。間にACジャパンのコマーシャルが入るのでした。それが普通の日常と化していたのです。

 大震災から14年が経ち、今はテレビ・ラジオから普通に、賑やかなコマーシャルが流れ、笑いも歌も溢れています。普通のことが普通になりました。当たり前の日常が戻ったのです。あの時のACジャパンのコマーシャルが懐かしいと思えるほどになりました。「あゝ 懐かしいと思ったとき 復興ができている」シンガーソングライター松任谷由実さんの言葉です。

 「懐かしい」という漢字は「ふところ」とも読みます。「目から垂れる涙を衣のふところで囲んで隠すさま」を表す会意文字です。あの時の涙を忘れず、それぞれの懐に大事にしまい込みましょう。つまり、あの困難を何とか乗り越えられたことを、これからの人生の肥やしとすることです。更にこれまで被災地を支えてくださった多くの方の、懐の深さのおかげに感謝することでもあります。その時、復興という名のコマーシャルがそれぞれの心に響き、被災地のイメージアップになることでしょう。

 それでは又、4月1日よりお耳にかかりましょう。 

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