テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1337話】「涅槃寂聴」 2025(令和7)年2月11日~20日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1337話です。
「言っていることは聞こえていて、うなずくが、しゃべることはほとんどできない。目を開けるのも辛そうだった」。2021年11月9日に99歳で亡くなられた作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの病床での様子。最期まで看取った秘書の瀬尾まなほさんが伝えたものです。
死の1カ月ほど前に、一時退院して新聞連載の随筆を書き上げたのが最後の原稿だったと言います。生涯現役を貫き通したのです。それを裏付けるような一文を亡くなる半年前に残しています。「長すぎた一生だと思います。様々なことを人の何倍もしてきました。全てに今は悔いがありません。十分に生きた我が一生でした」。
99歳ともなれば誰もが一線を退き、それなりの日々を送ることでしょう。日常生活を普通に営める人は多くはありません。寂聴さんは「長すぎた一生」と言うものの、その生涯が色褪せることなく、最期まで密度の濃い生き方でした。僧侶としてお釈迦さまのご生涯をなぞるような生き方を心がけていたのかもしれません。
お釈迦さまは今から2500年ほど前の2月15日に80歳でお亡くなりなられました。この日を涅槃会(ねはんえ)と言います。お釈迦さまは説法の旅の途中、鍛冶屋のチュンダの供養の食事をいただき、腹痛に襲われるのです。そして沙羅双樹の林の中に身を横たえられました。衰弱がひどい中、弟子たちに最後の教えを説かれました。「私はなすべきことはすべて成し終えた。何ら憂うところはない。いたずらに悲しんではならない。世は皆無常である。私の死に逝く姿を黙って見つめなさい」
たとえ釈迦と崇められようが、無常の風が吹けばその灯は消える、その理をしっかり見届けよと、身をもって諭されたのです。寂聴さんも「全てに今は悔いがありません」と言いながらも、「目を開けるのも辛い」という姿を晒しました。99歳まで健筆を揮われたものの、年老いていくことや病の前には如何ともしがたいという無常の姿を、これまた身をもって示されました。
「死ぬる日は ひとりがよろし 陽だけ照れ」寂聴さんの句です。澄み渡り達観した気持ちが出ています。誰しも一人で死んで逝かなければなりません。しかしお釈迦さまは教えを残し、私たちを導いて下さっています。同じように寂聴さん亡きあとも、休まず太陽が昇るように、寂聴さんの生き方や作品は誰かを照らしてその人生に彩を添えています。お釈迦さまの教えに「涅槃寂静」があります。涅槃は炎が吹き消されたこと、寂静は一切の煩悩を捨て去ったことで、全く清々として心穏やかな境地を言います。瀬戸内寂聴さんなら「涅槃寂聴」と言い切って、青空ならぬ天上界説法を続けておられるのでしょうか。
ここでお知らせいたします。1月のカンボジアエコー募金は、737回×3円で2,211円でした。
それでは又、2月21日よりお耳にかかりましょう。
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