テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1217話】「品位(ひんい)と品位(ほんい) 2021(令和3)年10月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1217話です。

 「皇室経済法6条」には、皇族が身分を離れる際には、品位保持のため一時金を支給する旨が定めれています。渦中の眞子さまが小室さんと結婚するにあたり、その一時金を辞退しました。1憶3725万円という額です。「小室家の金銭トラブル」ゆえのことなのでしょう。二人の結婚の意思は固いものの、このままでは国民の理解が得られないということで、皇族としての結婚の儀式や結婚式も行わないというのです。

 一時金よりも自由が欲しい、という眞子さまの叫びのように、聞えないわけでもありません。しかし、どこでどんな生き方をしようとも、皇族という生まれはついてまわります。その立場を汚さないための担保として一時金があるのでしょう。皇族という極めて特別な生まれには、「品位の保持」は当然のことかもしれません。たとえば雨漏りする家に住んだり、みすぼらしい格好をすることは許されないでしょう。では一時金だけで保てるのが、本来の品位でしょうか。

 曹洞宗では、品位と全く同じ字を「品位(ほんい)」と読むことがあります。「何々大和尚品位」という風に、和尚の位階を表す言葉です。和尚が修行して悟る段階を52に分けた「菩薩五十二位」というのがあります。最高位の五十二位は妙覚と言ってお釈迦さまです。お釈迦さまに近づくまでには、果てしない段階を踏まなければならないのです。和尚になろうと発心して、仏弟子となった時点で、五十二位の一番下の十信位に就いています。つまり仏の教えを信じて疑いの心を抱かない位のことです。

 しかし何年住職を勤めようが、まだまだ上には登り切っていないので、その住職が亡くなった後も、残された弟子が、師匠には五十二位を少しでも高く登ってもらいたいと願い、年忌法事を営みます。そのとき品位を増崇すると言います。増崇とは「ふやしてたっとぶ」という意味で、品位を増崇するとは、亡くなってもなお、修行を重ねて、位を上げてくださいということです。その法事のためには、本堂やお墓の掃除は勿論のこと、大勢の和尚さんを招きお経を挙げいただき、参列者をもてなしたりという勤めがあります。それは弟子としての修行でもありますが、その功徳を全て品位増崇のために回らし向けるのです。

 和尚の世界では、生きているときは勿論亡くなっても修行を加えていくことが品位(ひんい)を保つということです。皇族であれ一般人であれ、品位とは単に外見だけではなく、心を磨き続けることで保たれるものでしょう。たまたま10月11日は前住職文英大和尚の23回忌に当たります。まさに品位(ほんい)を増崇し和尚の品位(ひんい)を保つ日でもあります。

 ここでお知らせいたします。10月24日(日)午後2時 徳本寺にて「第15回テレホン法話ライブ」を開催致します。ゲストは津軽三味線日本一の織江響さん。入場無料です。
また、9月のカンボジアエコー募金は、767回×3円で2,301円でした。ありがとうございました。

 それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。

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