テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1124話】「億劫がらずに」 2019(平成31)年3月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1124話です。

 縦・横・高さが40里もある岩に、100年に一度天女が下りてきて、衣の袖で岩をひと撫でします。その100年一度を繰り返し、やがて岩が摩耗してなくなるまでの時間を1劫といいます。仏教に出てくる時間の単位です。それが億集まって億劫、つまり億劫(おっくう)という言葉になりました。誰しもそんな気の遠くなるような時間を考えると、些細な仕事など面倒臭くなるというわけです。

 8年前の3月11日に千年に一度という東日本大震災が発生しました。当時は確かに「千年に一度」ということが実感できました。こんなこと滅多にあることではない、この世も終わりかとさえ思いました。千年は想像を超えた時間・空間という感じでした。でも、1劫という時間から比べたら、極めて現実的な時間です。

 大震災の年、我が山元町では高速道路建設に伴い、弥生時代の中筋(なかすじ)遺跡において発掘調査が行われていました。そこで、町の学芸員が、砂層といわれる砂の層を見つけました。ちょうどその時に、大地が揺れました。まさに3月11日その日です。後日、本格調査が再開されて、そこは当時の海岸線から約2.3キロの地点ですので、その砂は津波によって運ばれたものと確認されました。

 そして弥生時代中期に仙台平野を襲った大津波が、仙台の沓形(くつかた)遺跡でも確認されていることから、30キロ離れた中筋遺跡の津波跡も同じ津波によるものだろうとのこと。つまり東日本大震災と同規模の津波が、約2000年前の弥生時代にも発生していたことが実証されたのです。しかも、東日本大震災が発生したその時に発見した砂層によってです。何という因縁でしょう。

 千年に一度などと言うのは、絵空事のように思っていましたが、そんなことはありません。勿論千年単位ばかりではなく、約400年前にも慶長奥州地震津波が、約120年前には明治三陸地震が、大きな被害をもたらしました。そして、先月26日、政府の地震調査研究推進本部は、青森県から房総沖にかけての、今後30年以内に地震が発生する確率を公表しました。宮城県沖などでマグニチュード7級の地震が発生する確率は90%と予測しています。

 東日本大震災からまだ8年しか経っていないのに、また地震の心配をしなければならないのかと、誰でもうんざりしてしまいます。しかし、3年前の熊本地震は、発生直前の確率は、ほぼ0~0.9%だったのに、起きてしまったのです。千年も百年も極めて現実的なこと捉えなければなりません。地震はいつか起きるではなく、いつでも起きるんだと、億劫がらずに常に心がまえ、また大震災の教訓を伝え続けていきましょう。
 尚、弥生時代の中筋遺跡の津波跡は、山元町歴史民俗資料館に展示されています。

 ここでお知らせ致します。2月のカンボジア・エコー募金は、159回×3円で477円でした。ありがとうございました。

 それでは又、3月21日よりお耳にかかりましょう。

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