テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第942話】「転んで転じる」 2014(平成26)年2月21日-28日

住職が語る法話を聴くことができます

942.JPG
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第942話です。
 まだ2月ですが、もう今年の重大ニュースは決まったようなものです。ソチオリンピックのスノーボード男子ハーフパイプで銅メダルの平岡卓(たく)18歳、同じく銀メダルの平野歩夢(あゆむ)15歳、そしてフィギアスケート男子で金メダルの羽生結弦(はにゅうゆづる)19歳、ほらみんな十代の若き選手の活躍です。
 とりわけ金メダルに輝いた羽生選手は、我が宮城県出身ということもあり、誇りとするところです。彼は3年前の東日本大震災が発生したとき、ホームグランドともいうべき仙台市のリンクで練習中でした。壁や氷に大きな亀裂が入るほどの激しい揺れに見舞われ、スケート靴の刃のカバーもつけずに外に飛び出しました。自宅も全壊となり、避難所で家族4人雑魚寝をして過ごしました。10日ほどして、練習場所を求めて仙台市を離れることになります。
 他のスポーツ選手やミュージシャンなどが、震災でみんながたいへんな想いをしている時に、自分のやっていることはいいのだろうか、というジレンマに陥った話はよく聞きます。羽生選手とて同じだったでしょう。しかし、各地でのアイスショーに出演して、被災しながらもひたむきに演技する姿に、万雷の拍手がありました。そして、自分のジャンプが東日本大震災後の希望になればと、ショーに出演することで練習の代わりにしてきました。ショーで訪れた全国のリンクでは、どこも練習場の使用料を受け取らなかったそうです。その感謝の気持ちもあり、ショーでの集中力も、練習の量も増しました。
 金メダルを獲得して羽生選手は言いました。「今まで、復興の役に立てるのかと無力感を感じていた。五輪の金メダリストになり、これからがスタート。何か出来ることがあると思う」。我々と同じ言動をとったとしても、金メダリストのそれは重みが違いますし、説得力が増します。大震災という試練を乗り越えたという何よりの実績が、どれほど被災者を鼓舞するかわかりません。
 「無常を転ずる」という言葉があります。変わらぬものは何もない、一寸先はわからないという無常の極みを、私たちは大震災で実感しました。無常なるが故に、時間を戻すことができない今、「無常の極み」に転んだままでいいのでしょうか。転んだままではなく、転じていかなければなりません。羽生選手は、大震災という無常に遭いながらも、ジャンプを磨き続けました。オリンピックのフリーの前半では、そのジャンプで転んだものの、立ち上がり自分の滑りを取り戻して、金メダルに転じました。被災地と呼ばれ転んだままでは終わりたくありません。「被災地の復興」が今年の暮れの重大ニュースになるよう精進しましょう。羽生選手にまけない金字塔を打ち立てましょう。
 それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1372話】
「仏前結婚式」
2026(令和8)年2月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1372話です。 ちょうど71年前の昭和30年2月1日、山下村と坂元村が合併して、我が町「山元町」が誕生しました。その時から発行された「公民官報やまもと」を綴じたものを、物置整理中に見つけました。昭和48年までの150号分です。新しい町になり新生活運動の息吹がそこかしこに感じられる紙面です。 中でも昭和40年11月の第61号には... [続きを読む]

【第1371話】
「520足の靴」
2026(令和8)年1月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1371話です。 「むずかしいことをやさしく やさしいことを深く 深いことをおもしろく おもしろいことをまじめに 書くこと」と言ったのは作家の井上ひさしさんです。まさにそのような姿勢を、堅いニュースを伝える際にも貫いたのは、久米宏さんです。 フリーアナウンサーの久米宏さんが81歳で亡くなりまし... [続きを読む]

【第1370話】
「馬連」
2026(令和8)年1月11日~21日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1370話です。 孫悟空でお馴染みの『西遊記』は、中国・唐の時代の玄奘三蔵法師のインド旅行記がもとになっています。インドで仏教を学び「大般若経」600巻を持ち帰り、漢文に訳しました。今から1300年以上前の663年のこと。そのうちの578巻目を「理趣分経」といいます。日常生活の中で仏に根差した生... [続きを読む]