テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第935話】「被災地の星」 2013(平成25)年12月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

935.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第935話です。
 「世紀の大彗星」と騒がれ、冬の夜空を飾ると期待されたアイソン彗星は、11月29日未明に太陽に最も近づいた際に散ってしまいました。彗星は長い尾を作るのでほうき星ともいわれます。アイソン彗星もその尾っぽが長く、本体の「核」もそこそこに大きい「大物」との見方がありました。しかし、専門家の予想より核が小さくて、太陽の熱や重力に耐えられず、急激に蒸発し崩壊したというのです。まるで「彗星のように現れて、彗星のように消えて行った」と自作自演でもしたかのようです。
 私たちが住むこの地球も星の一つです。いつか崩壊して消えてしまうことはないのでしょうか。あの東日本大震災の惨状を目の当たりにしたとき、地球上でこんなことが起こるのかと目を疑い、今自分が立っている場所がどこなのか、どんな時代に生きているのかと、頭の中が混乱していたことを思い出します。少なくとも今まで馴染んでいた地球ではない、ある種の地球の崩壊を感じました。その崩壊を強く感じたものの中にイチゴ畑があります。
 地域ブランド「仙台いちご」の産地として知られる我が山元町と隣町の亘理町は、東北最大のイチゴ畑が広がっていました。温暖な気候と沿岸部の砂地がイチゴ栽培に適していたのです。それが大震災の大津波で95%の面積が被災しました。ビニールハウスのビニールは跡形もなくなり、鉄パイプは針金を曲げたかのように無残に絡み合っていました。しかし、ボランティアの支援もあり、いち早く畑に散乱した瓦礫を取り除き、復興へ取り組みました。そこに重大な問題が起こりました。津波による塩害です。砂地や地下水に塩分が入り、イチゴ栽培は絶望的な状況に追い込まれました。
 そのとき、町から提案されたのは「高設栽培」による「いちご団地」構想です。これまでそれぞれの畑で作っていたイチゴを、できるだけハウスを集約して、まとまって栽培しようというものです。しかも土を使いません。イチゴは地面から1mぐらいの高さのヤシガラの入ったプランターに植えられます。プランターの上には管が張り巡らされ、肥料の入った養液が苗に与えられます。室温や水の管理、収穫の際の体の負担も従来よりずっと楽になるといいます。
 こうして、震災から2年8カ月後の11月7日に真っ赤なイチゴの初収穫がありました。「明日 地球が滅びようとも 君は 今日 りんごの木を植える」という言葉があります。崩壊寸前の被災地に、諦めないでりんごならぬいちごの苗を植えた人々。しかも彼らいちご団地の生産者の7割が住居を失い、今も仮設住宅から栽培に通っています。住まいの崩壊にも負けずに、イチゴを実らせた情熱は、復興の象徴でもあります。いまイチゴの輝くような赤い実は、被災地の星です。
 ここでご報告致します。11月のカンボジア・エコー募金は、115回×3円で345円でした。ありがとうございました。
 それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1356話】
「平和の鐘」
2025(令和7)年8月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1356話です。 「弾(たま)となり人殺せしか我が寺の供出させられし釣り鐘は」広島県のある住職さんの歌です。先の戦争で、金属類回収令で多くの寺の鐘が供出させられました。徳本寺の旧釣り鐘堂の梁には鐘を釣っていたと思われる穴だけが開いていました。鐘はお国のためになったのでしょうか。 お寺の鐘は平和の象徴と言ってもいいでしょう。それが... [続きを読む]

【第1355話】
「母と地獄」
2025(令和7)年8月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1355話です。 アメリカではハリケーンに「ローラ」とか「マリア」という女性名を付けることがあります。しかし、広島に原爆投下した爆撃機B29の愛称がエラノ・ゲイという女性名とは驚きです。 その由来は、爆撃機の機長ポール・ティベッツ大佐の母の名前だというのです。息子である機長からすれば、母は強さ... [続きを読む]

【第1354話】
「八月や」
2025(令和7)年8月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1354話です。 「八月や 六日九日 十五日」詠み人多数といわれる句だそうですが、戦争の重みを訴える力が感じられます。広島と長崎に原爆が落とされ日、そして終戦となった日が詠み込まれているからです。 先日檀家のAさんがお出でになりました。終戦から80年という節目なので、戦死したお父さんの供養をお... [続きを読む]