テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1368話】「後期高齢者」 2025(令和7)年12月21日~31日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1368話です。

 先月75歳の誕生日を迎えました。いただいたプレゼントは、後期高齢者医療資格確認書です。まだ現役の住職ですし、高齢者だからと甘えてはいられません。それでも年齢は正直です。

 亘理郡内に曹洞宗寺院が13カ寺あります。私が徳本寺・徳泉寺という2カ寺の住職を勤めていますので、住職は12人です。その中でいつの間にか最年長になってしまいました。私の前に老僧はいないのです。また県内のお寺の法要に伺っても、私より年上の老僧は数えるほどなのです。ついこの間まで、下っ端でこまごまと動き回って、法要の準備等に汗を流していたのに、今や法要の邪魔にならないように、おとなしく座っている立場です。

 さて、私たち僧侶には三師と言われる3人の大事な師匠がいます。仏門に入る業を授ける受業師、修行僧のリーダーである首座を勤めるときの法幢師、代々伝わってきた仏法を相続させる本師と言われる3人です。それ以外にも仏道の奥義を学んだ参学師や特に薫陶を賜った慈恩師という師匠がいます。これらの師匠に対して、弟子たる者は正月には寿餠という一片の餅を差し上げます。

 寿餠を七重八重に折った特別な熨斗(のし)の可漏(かろ)という容れ物に入れ、年賀の挨拶状を墨書したものを添えます。それを供えて、正月三カ日間師匠の福寿長久等を祈ってお経を唱えます。そして師匠に年賀拝登し寿餠を奉呈します。年末の忙しい時に、いくつもの寿餠を準備するのはたいへんなものでした。それも今年はする必要がなくなりました。後期高齢者には、もはや師匠と呼ぶべき人はいなくなってしまったのです。昔老僧に寿餠を準備する必要がなくなった淋しさを、聞かされたことがありました。今その時の心境がよく分かります。

 みなさまも1年を振り返り、去年とはだいぶ違う年の瀬であると感じていませんか。新しい出会いがあったうれしさ、大事な人を見送った辛さもあったかもしれません。思い通りにいかなかったことや、良くも悪くも思わぬようになって、一喜一憂したこともあったでしょう。何より1年、年を取ったということです。過去から今日までを見れば確かにそういうことです。しかし、今日から未来を見ればどうなるでしょう。

 〈そうだった 今日という日は 人生で 一番老いて 一番若い〉亀岡市の俣野右内さんの歌です。誰しも今日までで、今ほど年を取っている時はないのです。同時に今日の自分ほど若い時は、これからの人生にはないのです。何歳になろうが、生まれて初めて経験する歳です。というより、私たちが迎える毎日毎日は、人類史上誰も経験したことのない全く初めての日なのです。そう思うと大晦日も元旦もワクワクしてきませんか。後期高齢者なんのその。来年も老いて尚かぐわしい香りの生き方をして香気を放つことを、恒のならわし、恒例にしましょう。それこそが香気恒例者です。

 それでは又、新年1月1日よりお耳にかかりましょう。

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