テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1366話】「濁れる水」 2025(令和7)年12月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1366話です。

 〈濁れる水の流れつつ澄む〉自由律の俳人山頭火の句です。山頭火は大正14年43歳の時、出家して曹洞宗の僧侶となりましたが、住職になることはありませんでした。44歳から行乞放浪の旅に出ます。「漂泊の俳人」とも称されました。

 晩年は愛媛県松山市に「一草庵」という庵(いおり)を結びます。冒頭の句はその頃に生まれたものです。それから間もなく、昭和15年10月11日に58歳の生涯を終えます。死ぬ前の日記には「拝む心で生きそして拝む心で私は死なう」と記しています。

 俳人・行乞僧とは言っても、自らを「乞食(ほいと)」と卑下するほど、酒に溺れ知人に頼りながら生きていました。まさに濁れる水のような存在であっても、歩き続け俳句を作り続けることによって澄んだ心になることもあったということでしょうか。10数年流れ流れて辿り着いた拝む心の心境が〈濁れる水の流れつつ澄む〉にはあります。

 さて、12月8日はお釈迦さまがお悟りを開いた「成道会(じょうどうえ)」です。成道とは道を成就したという意味です。お釈迦さまは「生老病死」という苦しみを超えた真の幸せを願い、29歳で出家します。多くの修行者と共に、苦行林で尋常でない修行に打ち込みます。逆さ吊りで過ごしたり、炎の上を歩いたり、不眠不休断食を行じたりということに励みます。しかし6年間の修行を経ても、納得できる答えは得られませんでした。

 そこでお釈迦さまは、苦行林を下りて、尼連禅河で沐浴をし、たまたま村の娘スジャータの乳粥の供養を受けることができました。体力が回復すると、お悟りを得られるまでは動くまいと固い決意のもと、菩提樹の根元で静か坐禅をし続けました。そして8日目の朝、明けの明星をご覧になり、悟りの境地に至りました。悟りとは、かたよったり、こだわったり、とらわれたりしない心、即ち迷いや煩悩から解き放たれることです。

 坐禅の境地は、コップに入れた川の水にたとえられます。最初は濁っていますが、時間が経つにつれ、塵や砂などは沈殿して、澄んだ水になります。お釈迦さまも苦行林では濁った水でした。坐禅により澄んだ水つまり悟りを得たのです。そして一般的には澄んだ状態になっても、塵や砂がコップからなくなったわけではないので、またコップを動かせば、塵や砂が浮かんできて、濁った水になります。塵や砂は私たちの迷いや煩悩と言えます。お釈迦さの悟りは塵や砂も取り除かれた状態です。

 山頭火は漂泊の末、常に流れていないと濁ってしまう自分というものを悟ります。お釈迦さまは悟りを得たのち、人々を幸せに導くために、45年もの伝道の旅を続けられました。私たちはお釈迦さまの境地には至り得ません。せめて山頭火のように濁ってしまう自分を意識して、流れ続けて澄んだ水の心を保てるようにしましょう。

 それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

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