テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1364話】「熊手と人手」 2025(令和7)年11月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1364話です。

 落ち葉の季節、毎朝の掃き掃除で熊手が威力を発揮しています。「熊手」とは言い得て妙です。熊の爪のように先端が曲がった竹が何本もあって、一気に落ち葉を掻き集めてくれます。

 しかし、本物の熊の手や爪に出会ったら、危険なことは最近のクマ騒動で知るところです。思えば、昨年11月30日に秋田市のスーパーにクマが侵入し、2日間に亘って居座り続けました。男性従業員が襲われ頭などを負傷するということがありました。クマは罠にかかり駆除されましたが、これほどクマが身近な存在になったのかと驚きました。

 今年に入って、クマはわがもの顔で人間の生活圏に出没しています。民家の庭先に現れたり、小学校から大学まで、クマの侵入が目撃されています。役所や銀行の地下駐車場にも侵入しています。環境省によると、北海道・九州・沖縄を除く地域での出没件数は、約2万件に上ります。死傷者も196人となり過去最多です。そのうち秋田県の死傷者は全国最多の56人と3割近くを占めているのです。
とうとう秋田県では今月5日に、クマ被害対策を目的として陸上自衛隊が派遣されました。

 これほどまでにクマが生活圏に現れたのはどうしてでしょう。まさかクマが学校で勉強したいわけでも、役所に住民票を提出に来たとも思えません。まして、銀行に貯金などするクマはいません。生きるためただひたすらエサを求めているのです。

 原因のひとつは近年の気象条件の変化です。エサとなるどんぐり類の不作が影響しています。そのため、人間の住むところにも現れるようになったのでしょう。これまでクマは冬眠前の秋に、山でエサの補給を完結できました。今やクマはどんぐりがないからと、好き嫌いなど言っていられないのです。人間の食べるものでも何でも食べなければ生きていけない、そんな気持ちで駆除される危険を冒してまで、人里に身を晒しているかもしれません。

 ただクマの研究をしている東京農工大学の小池教授は「駆除は最終手段であり、クマが山から出てきた時点で人間の負け」と言っています。野生動物と人間の生活圏を隔てている「里山」が人口減少などで、手入れされないことにも問題があるようです。人間とクマの暮らす境界線があいまいになってきました。クマが山の環境を破壊はしないでしょう。里山に人手をかけられないように、人間が自然環境を変えてしまったのです。緊急事態の今はともかく、今後クマに近寄られない環境を整えることも大切です。もしかして、町に出てきたクマは賢くなって次のように言うかもしれません。「熊手は落ち葉集めの役に立っているし、幸福を集める縁起物でもあるのに・・・。人間は人手もかけず里山を荒らしているくせに、俺たちを駆除したりして、ほんとうに人でなしなんだから・・・」

 ここでお知らせいたします。10月のカンボジアエコー募金は、804回×3円で2,412円でした。ありがとうございました。
 
 それでは又、11月21日よりお耳にかかりましょう。

 

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