テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1363話】「精進が良い」 2025(令和7)年11月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1363話です。

 10月26日、関東・東北地方は朝から雨でした。それにもかかわらず、第19回テレホン法話ライブには、たくさんの方に参加いただきました。そこでみなさんに申し上げました。「何かの集まりの時、天気が良ければ、みなさんの日頃のご精進がよろしいようで、こんなにいい天気になりましたねと挨拶します。今日は何と言えばいいのでしょう。みなさんの日頃の精進が悪いので、こんな雨降りになって・・・?まさかです。晴れた日なら、芋煮会でも紅葉狩りでも、誰でも喜んで参加します。この悪天候の中、お寺で法話を聴くという地味な会に参加するなんて、余程精進の良い方でなければできません」

 精進が良いとは、心がけが良いという意味合いでしょうが、様々な困難を克服して何事かを成し遂げるという意味もあります。精進は仏教語ですから、ひたすらに仏道修行に努め励むことが、元々の意味です。お寺で法話を聴くのは、仏の教えに触れる第一歩であり、雨が降ろうが風が吹こうが、精進の志があればこその行いです。

 それにしても、義務でもないのに、悪路を厭わず、参加下さった方々には感謝あるのみです。檀家さん以外にも、横浜・東京・福島と県外からの参加者もおられ、恐縮いたしました。中でも1番最初に会場に訪れた男性に、「私は岩手県盛岡市の小笠原俊男の息子です」と挨拶されて、びっくりしました。奥様とお母さんと3人でいらしていたのです。伺えば、俊男さんはお亡くなりになり、今年が3回忌だというのです。「母も高齢になりましたが、元気なうちにと、父の供養の想いも込めて、今日参加しました」

 小笠原俊男さんは、テレホン法話ライブの第1回目から奥様と2人で参加して下さっていました。地元の人ですら、テレホン法話ライブの存在も知らないときに、態々盛岡からお出で下さるとは何と奇特な方だろうと思っていました。毎年のように参加され、時にはビデオカメラを設置してライブの様子を記録していかれたこともありました。コロナ騒動の頃からでしょうか、お姿を見かけなくなりました。思いがけない訃報に接し、19年の歳月が走馬灯のように巡り、手を合わせました。

 毎年盛岡から徳本寺までお出で下さったとは、どれほどの精進を積んでこられたのでしょうか。精進とは距離や天候の問題ではなく、その志の強さなのです。小笠原俊男さんは少なくとも19年前から、淡々と行じてこられました。その姿がきちんと息子さんにも伝わっていることにも、感服するばかりです。テレホン法話というささやかな仏縁が、盛岡と徳本寺の距離を縮め、親と子の絆を深めてくれたとすれば、こんな有り難いことはありません。ある人が言いました。「死してなお 親は子を育て 死してなお 子は親を思う」。これからもテレホン法話を続けることが、私にとっての精進でもあります。

 それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。

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