テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1358話】「さびない鍬」 2025(令和7)年9月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1358話です。

 現在全国の100歳以上の高齢者は9万5千人を超えています。徳本寺の過去帳にもここ10年以上毎年100歳を超えた方の名前が記されています。

 さて、100歳と言えば良寛さんにまつわる次のような話があります。80歳のおばさんが良寛さんを訪ねてきました。「良寛さん、私もこんな歳になりましたが、もう少し長生きをしたいので、長寿のご祈祷をお願いします」「それで何歳まで生きたいのじゃ」「とりあえず100歳までということでお願いします」「よろしい、だが、私の祈祷はよく効くので、100歳と言えば、ちょうど100歳の大晦日にあなたの命は亡くなるが、それでもよいな」「いや、それはちょっと・・・」「ではいくつまでがいいのじゃ」「うーん150歳まででお願いします」「望みとあらばそのように祈祷するが、やはり150歳になった大晦日には死んでしまい、151歳のお正月は迎えられないが、それでもよいな」「いや、できれば300歳まで生きたいのですがどうでしょうか」「よいか、300歳と言っても、その歳になればやはり死ぬ。それより死んでも死なない生き方を勧めるが、どうじゃ」。おばあさんが「死んでも死なない生き方」を納得できたかどうかは分かりません。

 こんな言葉に出会いました。「さびない鍬でありたい」。使わない鍬は錆びてしまいます。いつも鍬で耕すように、常に身体を動かし、自分でできることを、いくつになってもやり続ける。つまり錆びない鍬のような、頭であり手足でありたいということです。これは広島県尾道市の石井哲代さんの信条です。石井さんはこの4月で105歳を迎えた方です。20年前に夫を亡くしてからは、ひとり暮らしで、家の中のことは勿論、草むしりの果てまで元気にこなしています。その明るく前向きな姿は近所では評判でした。常にありがとうを忘れず、何でも「おいしい、おいしい」といただき、できなくなったことは求めないという生き方は、何と潔いことでしょう。本も出版され、ドキュメンタリー映画にまでなりました。

 もし、良寛さんが今、石井哲代さんに会ったら、こう言うのではないでしょうか。「私が200年前に言った『死んでも死なない生き方』そのものですね。錆びた鍬は主がいなくなればあっという間に忘れられます。光っている鍬はたとえ主がいなくなっても、誰かがそれを使い続けてくれるかもしれません」。哲代さんはそれに対して「私は長生きのご祈祷はお願いしませんが、少しでも童心に帰りたいので、一緒に手毬つきをしませんか」と答えるような気がします。

 ここでお知らせいたします。8月のカンボジアエコー募金は、834回×3円で2,502円でした。ありがとうございました。
 
 それでは又、9月21日よりお耳にかかりましょう。

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