テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1350話】「欲と水」 2025(令和7)年6月20日~30日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1350話です。

 46億年前、地球ができたころ、まだ海はありません。3億年ほど経って、地球の表面が冷めると雨が降り始めました。何と千年間も降り続けたそうです。現在のような海になるまでには、更に7億年を要します。こうして36億年前に生命の起源が海に生じたと考えられます。ヒトの出現はずっと後のことで、400万年前です。そして、地球全体の70㌫が海です。奇しくもヒトの体の70㌫も水分です。

 地球にも人間にも水はなくてはならないものです。「人は水にかれても死ぬが おぼれても死ぬものである」大正時代の社会経済学者河上肇の『貧乏物語』にある言葉です。水は生命の源です。だからなくてはならないものです。同じ水が人をおぼれさせ、命を奪うこともあるわけです。これは単なる水の話ではなく、人間の欲望の例えとも言えます。命を養うために食欲は必要です。しかし、暴飲暴食は命を縮めます。欲に溺れて自滅しないよう、欲望を制御する自制心が大事です。

 さて実業家としても知られるアメリカのトランプ大統領は、世界で一番裕福な大統領かもしれません。そして古き良きアメリカを取り戻したいのでしょうか。自国の車が売れないのは、外国からの車が売れているからと、法外な関税を課してきました。外国の車の方が安くて性能が良いから売れているのです。それに対抗する努力もしないで、自分の国だけが豊かになればいいと、欲望丸出しの姿は、水に溺れる寸前に思えてきます。

 一方5月13日に89歳で亡くなったホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領は、「世界で最も貧しい大統領」と言われました。2010年~15年に大統領を務めました。公邸には住まず、収入の9割を貧困層に寄付して、自分の生活費は毎月15万円程度でした。そしてこう言うのです。「私は質素なだけで、貧しくはない。貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しないことである」

 物質的豊かさに反比例して、心は貧しくなってしまいます。そして私はダライ・ラマの言葉を思い出しました。「欲望は海水を飲むことに似ています。飲めば飲むだけ、喉が渇くのです」。喉が渇く度に、次々と高い関税をかける大統領の愚行を指すかのようです。渇きを癒すためには、「自分だけが良ければ」という貧しい根性を捨てることです。真水を求める苦労をせずに、手近な海の水を飲んでは、喉が渇くだけです。真水を分け合う心の豊かさがある人こそ、まさに真のリーダーです。

 何十億年の彼方から繋がってきた私たちの命、計り知れない命のおかげで今の私が存在しているのです。自分一人が突然この世に存在したわけではなく、ひとりでここまで生きてこられたわけでもないのです。だから自分だけがと欲に溺れて海の水を飲んだら、人生はしょっぱい否、失敗です。

 それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1369話】
「白い馬」
2026(令和8)年1月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1369話です。 あけましておめでとうございます。今年はうま年ですが、お釈迦さまには長年一緒に過ごしたカンタカという白い馬がいました。奇遇なことにお釈迦さまと同じ日に生まれました。更にその馬の世話をしていた御者のチャンダカも同じ日に生まれています。お釈迦さまは釈迦族の王子として生まれ、カピラ城に住んでいました。17歳の時ヤショーダ... [続きを読む]

【第1368話】
「後期高齢者」
2025(令和7)年12月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1368話です。 先月75歳の誕生日を迎えました。いただいたプレゼントは、後期高齢者医療資格確認書です。まだ現役の住職ですし、高齢者だからと甘えてはいられません。それでも年齢は正直です。 亘理郡内に曹洞宗寺院が13カ寺あります。私が徳本寺・徳泉寺という2カ寺の住職を勤めていますので、住職は12... [続きを読む]

【第1367話】
「安青錦」
2025(令和7)年12月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1367話です。 野球の本場アメリカで、アメリカ人以上の活躍をする日本人の大谷翔平。一方、国技である相撲では、ウクライナ出身の安青錦(あおにしき)が、九州場所で初優勝を果たし、大関に昇進しました。 安青錦の祖国ウクライナにロシアが侵攻し始めたのは、3年前の2022年のこと。出稼ぎをしていた母を... [続きを読む]