テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1349話】「背番号3の背中」 2025(令和7)年6月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1349話です。

 好きな数字はと訊かれたら、迷いなく「3」と答えます。勿論長嶋茂雄さんの背番号だからです。小学生の頃その背中に憧れました。ユニフォームなど買ってはもらえないので、「3」という背番号を手作りした覚えがあります。

 当時まだテレビはなく、たまにラジオで野球中継を聴くぐらいでした。そして伝説の天覧試合を聴いていた覚えがあります。同点で迎えた9回裏先頭打者の長嶋さんがサヨナラホームランを打った時の興奮は、忘れられません。天皇陛下は9時15分に帰られる予定でした。陛下が立たれる直前に劇的な一打を放ったのですから、神懸かりのようなものです。

 永光の背番号3の背中は、あまりにもドラマチックです。立教大学から鳴り物入りで巨人軍に入ってデビュー戦。プロ野球屈指の金田投手から4連続三振という洗礼を受けます。翌日の第一打席も三振でしたので、5打席連続バットにボールが当たらなかったのです。その後雪辱を果たすべく闘志を燃やし練習を重ね、新人の年を終わってみれば、全イニング出場、29本塁打と92打点でそれぞれタイトルに輝きました。躓いても立ち上がる背中の強靭さを感じました。

 現役引退後、1974年に巨人軍の監督に就任。しかし1年目は球団として初めて最下位という屈辱を味わうも、めげずに翌年は優勝を果たします。1980年一旦ユニフォームを脱ぎますが、1992年に監督に復帰。そして1994年10月8日、プロ野球史上初の同率首位同士の最終戦での優勝決定戦。天覧試合に勝るとも劣らない自ら「国民的行事」と称した中日との試合です。長嶋さんは試合前のミーティングで「勝つ、勝つ、勝つ」と3度言って選手を奮い立たせました。その結果見事、勝利監督になったのです。勝負師の背中は、全幅の信頼を得ていました。実はその年の7月24日92歳の母を亡くしています。幼い頃夜なべをして、布のボールを縫ってくれた母です。しかし、チームに迷惑をかけるからと、密葬にも帰らず隠し通しました。そして日本シリーズで日本一の監督になって本葬を行い、布のボールに報いる何よりの親孝行の背中を示したのです。

 「『雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ』 そんな人生はつまらない せっかく雨が降ってくれたんだ 『雨を喜び』 せっかく風が吹いてくれたんだ 『風を楽しみ』 という生き方がいい」と長嶋さんは言っていました。ファンを裏切らないことを信念に、雨風に負けない努力の姿は見せずに、いつもひまわりのような明るさを以って、プロとしての矜持を貫いたのです。

 さて幼い頃背番号3に憧れたおかげで、今僧侶として「3」という数字には縁を感じます。仏教で大切な仏法僧という3つの宝「三宝」を日々敬うことができているからです。仏はお釈迦さま、法はその教え、僧はその教えを実践する者を言います。その三宝について3分間のテレホン法話で敷衍しているつもりです。「国民的テレホン法話」にはなれませんが・・・。

 ここでお知らせいたします。5月のカンボジアエコー募金は、1,100回×3円で3,300円でした。ありがとうございました。それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1357話】
「花には水を」
2025(令和7)年9月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1357話です。 仏教思想家のひろさちやは「仏教は『幸福学』です。仏教にかぎらず、あらゆる宗教が幸福学なのです」と言っています。不幸になりたい人はいません。誰しもが幸せになりたいのです。 仏教を開かれたお釈迦さまの正式な呼び名は「大恩教主本師釈迦牟尼仏」です。大きな恩の教えの主である本物の師匠としての釈迦牟尼仏ということです。偉... [続きを読む]

【第1356話】
「平和の鐘」
2025(令和7)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1356話です。 「弾(たま)となり人殺せしか我が寺の供出させられし釣り鐘は」広島県のある住職さんの歌です。先の戦争で、金属類回収令で多くの寺の鐘が供出させられました。徳本寺の旧釣り鐘堂の梁には鐘を釣っていたと思われる穴だけが開いていました。鐘はお国のためになったのでしょうか。 お寺の鐘は平和... [続きを読む]

【第1355話】
「母と地獄」
2025(令和7)年8月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1355話です。 アメリカではハリケーンに「ローラ」とか「マリア」という女性名を付けることがあります。しかし、広島に原爆投下した爆撃機B29の愛称がエラノ・ゲイという女性名とは驚きです。 その由来は、爆撃機の機長ポール・ティベッツ大佐の母の名前だというのです。息子である機長からすれば、母は強さ... [続きを読む]