テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1346話】「五体投地」 2025(令和7)年5月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1346話です。
大阪・関西万博が始まって間もなく、警備員が土下座している様子が報じられました。カスタマーハラスメントいわゆる客からの不当な迷惑行為を疑われました。来場者男性に駐車場を尋ねられた警備員が、その応対のとき身の危険を感じて、自ら土下座したということでした。
土下座は本来、目上の人や神仏に対して敬意を払う最上の礼法です。大名行列で大名の籠が通るとき土下座をしたことでもわかります。それが大正・昭和にかけて、謝罪やお願いをするときの姿勢になってきました。現在では土下座を強要すると強要罪という立派な犯罪です。
さて、土下座の原点は古代インドにあります。五体投地という最高の敬礼法です。相手の足元にひざまずき、頭を地につけ、両手で足先を手に取り、額に接触させるというものです。まさに額づいて最大の敬意を表すわけです。
私たち僧侶も仏さまや祖師に対しては、単なる合掌だけでなく、五体投地の礼拝をします。両膝・両肘・額の5点を地に付けてお拝をします。最初に膝を折り、肘と額を地に付けます。その時、手のひらを上向きにして、耳のあたりまで上げて、何かを戴くような作法をします。仏足つまりお釈迦さまのおみ足を戴くつもりで、恭しく行うのです。この一連の動作を「一拝」と数えます。基本は「三拝」をして、ひとつのお拝となります。法要の前後に三拝をしますし、丁寧な法要であれば間にも三拝が入ります。「三拝九拝して頼みごとをする」と言いますが、繰り返しお拝をして礼を尽くすわけです。大法要になれば一日に何度も三拝をしなければなりません。かなりの修行です。
五体投地という身を投げ出して、全身全霊で仏足を戴くとは、仏さまの頭のてっぺんからつま先まで、全てを有難く頂戴いたしますという、これ以上にない意思表示です。そして「南無帰依仏」とお唱えしますが、「南無」はサンスクリット語の「ナモ」を音写したもので、尊敬を込めて礼拝する意味があります。「帰依」は日本語で、深く信仰し教えに従うということを表します。「南無帰依仏」は、まさに五体投地の心でもあります。
よく老僧が言っていました。「お拝ができなくなったら和尚をやめるときだ」。確かに歳と共に足腰や膝が弱ってくれば、五体投地の三拝も難行苦行になってきます。しかし五体投地ができなければ、土下座して仏さまに謝ることもできません。つまり死ぬまで和尚をやめられないということでしょうか。もっとも仏さまは決して無理難題を押し付けるようなカスタマーハラスメンはしません。だから心を無にして信じればいいのです。「右ほとけ左はわれと 合わす手の 中にゆかしき 南無のひとこえ」
ここでお知らせいたします。4月のカンボジアエコー募金は、1,165回×3円で3,495円でした。ありがとうございました。
それでは又、5月21日よりお耳にかかりましょう。
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