テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1325話】「はらこめしと仏飯」 2024(令和6)年10月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1325話です。

 わが山元町は小さな田舎町ですが、この時期、行列ができる店があります。「はらこめし」を提供している店です。はらこめしは、鮭の煮汁でご飯を炊き込み、その上に鮭の切り身とはらこをのせたものです。はらことは鮭の卵いわゆるイクラのことです。隣の亘理町荒浜が発祥の地ですが、亘理郡内に行き渡っていて、家庭ごとに自慢の味付けがあるほどです。荒浜は阿武隈川の河口にあります。川に鮭が上がってくる10月に鮭漁(さけりょう)が解禁になり、はらこめしの季節がやってきます。

 阿武隈川の鮭は、江戸時代から秋の珍味でした。特に伊達政宗が献上されたはらこめしをたいそう喜ばれ、広く世に知られるようになったといいます。元々荒浜では神社の秋祭りに、神饌料理として新米と鮭ではらこめしを作り、神に捧げていました。五穀豊穣と豊漁(ほうりょう)を祝い、神様と一緒にはらこめしを分かち合う祈りの食文化を育んできたのです。そして10月8日を「はらこめしの日」に定めました。

 さて、私にとって「はらこめしの日」より忘れてはならないのが、10月11日です。師匠であり父であり、徳本寺前住職文英大和尚の命日です。私は徳本寺に生まれましたが、線香のせいばかりではなく、寺を煙たがっていました。子どもの頃、事あるごとに父に言われました。「寺に生まれ育った限りは、仏飯をいただいているのだから、そのことだけは忘れるな」。仏飯とは仏に上げるご飯のことです。毎朝本堂に上げる仏飯のお下がりをいただいて我が身を養うという理屈です。実際は寺では檀家さんから「月牌(がっぱい)」と称するお米をあげていただきます。月牌とは月と位牌の牌と書きます。毎月先祖の位牌にご飯をお供えしてくださいということで、毎年1軒当たり1升のお米を預かるわけです。そして毎月どころか毎朝本堂で各家の先祖供養のお勤めをしています。

 その月牌のお米は寺を守る者の食い扶持にもなっているのです。そういう意味では、お釈迦さまはじめ、亡くなられた仏さまのおかげで、私は命を養ってきたといえます。仏飯をいただく者は、仏さまを粗末にすることなく、檀家さんに感謝しなさい。お経は読めなくとも、子どもなりにできることがある。ということで本堂の雑巾がけは、学校に行く前の日課でした。寺は住職個人の所有ではなく、檀家さんの寺です。みなさんと共に、仏さまを守り信仰心を養う場として、維持管理すべきことを、仏飯によって教えられました。

 はらこめしが自然の恵みに感謝する神饌料理であるように、月牌のお米は仏さまを守り敬う尊いお供えです。そのことを改めて噛みしめて、今日も感謝して仏飯をいただきます。

 ここでお知らせいたします。10月27日(日)午後1時30分より徳本寺にて、第18回テレホン法話ライブを開催いたします。はらこめしを食べたついでに、お立ち寄りください。ゲストは琵琶奏者榎本百香さん。入場無料です。

 それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。        

  

 

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