テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【1315話】「一心松」 2024(令和6)年7月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます

元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。
東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。しかし、松林を超えるほどの津波には敵わず、海岸の風景は一変しました。
そして海岸から300㍍の徳本寺の末寺徳泉寺は、境内の松の木は勿論、本堂などすべてが流され、白い砂浜状態でした。大震災から9年経った令和2年に、やっと本堂が再建されました。これは流されながらも奇跡的に発見された「一心本尊」さまの下に、「はがき一文字写経」を納経したいという全国の方の想いが形になったものです。
翌年には本堂前にささやかな石庭を整えました。その中にひとつ珍しい石がありました。正面から見ては普通の石なのですが、裏から見ると、針金のように細く小さな松の枝が一本、わずかな石の穴の中に生えているのです。まるで石の中から生まれたかのような姿です。最初見た時は驚きながらも、すぐに枯れてしまうのではと思っていましたが、3年経った今も針金松の葉は緑です。
石の上にも3年ではありませんが、全ての松林がなくなった後に、石の上という極限の環境の中で命を保っているとは、奇跡のよう松です。「一心本尊」とは、どんな災難に遭ってもみなさんの支えになる一心で留まった本尊であると信じて名付けられたものです。石の裏側に生えた針金松は、誰にも見られず、一心本尊さまと向き合っている位置にあります。「松は吹く説法度生の聲」といいますが、本尊さまと心を通わしているのか、何やら暗示的です。
さて、曹洞宗を開かれた道元禅師には次のようなお歌があります。〈荒磯の波も得よせぬ高岩に かきも付くべきのりならばこそ〉「荒波打ち寄せる海岸で、波も寄せ付けないほどの高い岩にも、海苔が掻き付くつまり岩肌にへばりつくように海苔が生えている」ということです。もうひとつの意味としては、「のり」は海の「海苔」と仏法の「法」という「のり」の意味をかけています。「かきもつくべき」も「へばりつく」と、教えを「書き尽くす」ということをかけています。つまり、高岩に海苔が付くように、どんな環境にあっても、尊い教えであればこそ、それを求め伝えようという人々の、書き尽くそうとする精進の積み重ねによって、正しく伝わるものであるということです。
針金松も松林なきあと、悲しみという風や困難という砂嵐から人々を守り励まそうと、一途に石にへばりついているかのようです。高岩ののりの如き針金松を、これからは被災地のシンボル的一心本尊さまと共に、「一心松」と呼んで、崇め奉(たてまつ)ることにしましょう。
それでは又、7月11日よりお耳にかかりましょう。

一心松
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