テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1282話】「追善供養」 2023(令和5)年8月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1282話です。

 昭和59年から平成19年にかけて、5千円札の肖像画になっていた世界的な農学者新渡戸稲造は、若い頃ドイツに留学していました。ある日店でコーヒーを飲んでいると、公園で40人の孤児たちが保母さんに連れられて遊んでいるのが見えました。ちょうどその日は母の命日でした。「そうだ母のへの追善供養に、子どもたちにミルクを飲んでもらおう」と思い立ちました。店のおばさんに頼んで、子どもたちにミルク一杯ずつをふるまうことができました。子どもたちは飲み終わると、歌を歌ってお礼をしてくれました。それを聞いて彼は親孝行をした気持ちになったといいます。

 追善供養とは、亡き人の霊が安らかであるようにと願って善行を施すことです。ご法事やお墓参りという供養事も立派な善行です。更に追善供養には、亡き人に代わって行う善いことも含まれます。亡き人が健在であればきっとそうしたはずだが、代わって自分が善いことをして、それは亡き人が行ったものとして、善を追加してあげるのが「追善供養」です。

 新渡戸稲造の母がこの場にいて、孤児たちを見たら、きっとミルクをご馳走したろうと思い、母の命日という巡り合わせも重なり、追善供養に及んだのです。

 さて、徳本寺の開基家大條家ゆかりの茶室は、町の文化財になっています。一説には豊臣秀吉から伊達政宗が賜った茶室とも伝わる貴重な歴史遺産です。伊達家に仕えた大條家が、ある手柄の褒美として拝領したものです。残念ながら、老朽化と東日本大震災の被害で、朽ち果てんばかりになっています。現在町では、修復のためにクラウドファンディングなどで、全国に支援を呼び掛けています。

 それのことで、京都の谷口さんという知人の方から、大枚の寄付が届けられました。そして寄付者名は自分ではなく、亡き両親の名前にしてくださいというのです。「両親は生前、住職様と良き縁を得たことをとても感謝しておりました。存命であればきっと今回の茶室修復に寄付をしたと思います。少しでもお役に立ててくだされば幸いです」。そんな有り難い言葉も添えてありました。まさに追善供養そのものです。

 大條家は元々伊達家の分かれです。大條17代道徳は、戊辰戦争の折に伊達家の窮地を救う働きが認められ、伊達姓に戻るように言われ、伊達宗亮と改名します。奇しくも今年が伊達宗亮の百回忌に当たります。この巡り会わせに、茶室の修復が叶うなら、またとない追善供養です。また、徳本寺でも開基家の恩に報いる報恩供養という意味も込めて、秋には法要を営みます。そして、伊達宗亮の4代後の子孫に伊達みきおなる人物がいます。今や天下統一を果たしたかのようなあのサンドウィッチマンです。彼もテレビ・ラジオで我が先祖ゆかりの茶室として、広く修復を訴えています。何十年後かに、5千円札の肖像画に伊達みきおが載ることを思い描いて、みなさまも茶室修復にご協力ください。

 それでは又、8月11日よりお耳にかかりましょう。

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