テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1278話】「鬼籍に入るからには」 2023(令和5)年6月21日~30日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1278話です。
「鬼」という漢字は、大きな丸い頭をして、足元が定かでない亡霊を描いた象形文字です。なるほど「魂」という漢字の作りにも鬼という字が入っています。鬼と戸籍簿の籍と書いて、鬼籍とは過去帳のことです。亡くなることを「鬼籍に入(い)る」とも言います。
今年半年で百歳を超えて鬼籍に入った檀家さんは、5人もいます。少子高齢化の町ではありますが、長寿が際立っています。「鬼才」という言葉が示すように、鬼という字には「人並外れて優れた」という意味もあります。鬼籍は百年以上も生きた方が入るにふさわしいともいえるでしょうか。まさに奇跡のような人生ですから。
さて、今年の鬼籍をめくると、90歳を超えた方が6割を占めます。そんな中でひとり40代の方がいます。その男性は自ら命を絶ったのでした。家族は妻と学校に通う子ども3人です。新しく建てた家に住まいして、はた目には何自由ないように見えます。しかし、家族も気づかない職場での悩みを抱えていたようです。その前日、実家に帰ってきて、男性の両親も交えて家族揃って食卓を囲んだのです。しかし、翌日、車で出かけたまま、戻ることなく、懸命の捜索の結果、車の中で遺体となって発見されました。
残された家族にとっては信じたくもない現実です。小さい子どもは、ただ泣きじゃくるばかりでした。「死にたい」と思うと、あたりが見えなくなり、自分だけの世界に入り込んでしまうのかもしれません。どうせ自分の気持ちなど誰にも分ってもらえない。それなら、死ぬことによって事の重大さを周りに知らしめようとしたのでしょうか。自分の命というものを勘違いしないでください。自分で命は作れません。縁あり授かって預かっている命です。自分勝手に扱っていいわけはありません。何よりも大切にしなければなりません。
我が国の自殺者数の推移を見ると、2003年の3万5千人をピークに減少傾向にありました。しかしコロナ禍以降3年で、3割増加しています。2022年は2万1881人でした。特に児童・生徒は514人で、過去最多になりました。
大人であれ、子どもであれ、悩み苦しみのない人はいません。ひとりで抱え込まないことです。誰かに話してみましょう。ちょっと立ち止まって想像してみて下さい。自殺者の遺族は、生涯にわたって悲しみと苦しみを背負っていかなければならないのです。人を悲しませるために生きているのではありません。人に喜んでもらえて、この世に生を受けた意義を見出せます。
「人生は生きるに値する ここにいる僕でも そう思う」これはある死刑囚の言葉です。私たちは生きなければならないのです。仕事の鬼ならぬ、人生の鬼となって、精一杯生き切って初めて鬼籍に名を連ねることができます。
それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。
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