テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1277話】「最年少名人」 2023(令和5)年6月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1277話です。

 「最年少」という言葉は、いまや藤井聡太の枕詞です。小学校6年の時に詰将棋解答選手権で優勝して、最年少の歴史は始まりました。14歳2カ月でプロ入り、15歳6カ月で一般棋戦優勝、17歳11カ月で初タイトルを獲得、すべて史上最年少です。更に二冠から六冠までのタイトル獲得が、すべて最年少記録です。そして、20歳7カ月で名人獲得で七冠となり、最年少で将棋の頂点を極めました。

 その快進撃の根底にあるのは、「強くなりたい」という一貫した純粋な思いだといわれます。4歳の時に将棋と出会い、夢中になったそうです。近所の高齢者施設で将棋の相手をしてもらい、「毎日将棋が指せるから、早くおじいちゃんになりたい」と言ったとか。そのほほえましい願いが、名人の位にまで届くのですから、まさに「三つ子の魂百まで」です。

 将棋盤は9×9で81のマスがあります。ひとつの局面で約80通りの可能性があるそうです。次の一手を選ぶために、数時間も考え抜くことがあります。そんな将棋に人口知能いわゆるAIが入り込んでいます。藤井名人も中学生の頃から、AIを取り入れて研究し、力をつけてきました。そして、元号が改元するときに、「令和に起こる将棋界のビックニュースは何でしょうか」と尋ねられて、「人間と一度も対局せずに棋士になる方が出てくるのではないかと思います」と答えています。

 ハッとさせられる言葉です。AIの進化はまるで宇宙人でも見るかのようです。コロナ禍が対面の機会を奪い、リモートとか仮想世界という現実にはまってしまうと、人という存在を意識しないことが当たり前になってしまう恐ろしさがあります。チャップリンの映画『モダン・タイムス』を思い起こしてしまいます。機械文明を風刺した映画で、個人の尊厳が失われ、機械の一部分になってしまうという喜劇でした。

 しかし、AIの上を行くのが藤井名人です。AIを超える最善手をいくつも繰り出して、タイトルを獲得し、保持してきました。それは言葉を覚えるように、将棋を覚えて来たからではないかと言語脳科学者は評しています。子どもが言葉を覚え始めると、文法など知らなくても、どんどん単語を入れ替えて、文章を組み立てることができます。それと同じように、将棋の駒を入れ替えて、新たな手筋を考えることができるのだろうというのです。私たちが感覚的に言葉を発するように、藤井名人は自在に将棋を指せるのでしょう。その上でAIの力を研究すれば、鬼に金棒です。

 それでも数ある藤井名人のエピソードの中でほっとするのは、おばちゃんから将棋セットを贈られたことが、将棋との出会いだったという話です。AIの前におばちゃんという存在があったのです。どんな局面になっても、おばあちゃんを思い浮かべれば、AI以上の力を発揮できそうです。おばちゃんのAIのAは「あせらず あわてず 頭を使え」のAで、Iは「意外な 一手に 行きつくぞ」のIかもしれません。
 
 ここでお知らせいたします。5月のカンボジアエコー募金は、507回×3円で1,521円でした。ありがとうございました。それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。

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