テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1274】「お下がり」 2023(令和5)年5月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1274話です。

 ランドセルはオランダ語で軍隊が背負うカバンの「ランセル」が語源ですが、日本では小学生の専売特許です。今年小学校を卒業した大阪市の森下紡(つむぎ)さんのこんな新聞投書がありました。「赤い色のランドセルは、6年前、七つ上の姉から譲りうけたものです。姉はとてもランドセルを大切に使いました。誰よりもきれいに使いました。それを捨てるのはもったいないと思い、私に譲ろうと思ったそうです。/姉はそのランドセルに対してすごく熱い思いがあったので、譲り受けた時は姉と『きれいに6年間使う』と約束しました。/この春、その6年間が終わりました。ランドセルは壊れることなく、私も誰よりも大切に使いました」

 更に森下さんは、「姉とランドセルに対してありがとうと伝えたいです。姉のおかげで物を大切にすることができるようになったと思います。私はこれからも物を大切にできる人になりたいですし、一生今の達成感は忘れません。お姉ちゃん、ありがとう」と結んでいます。

 6年間姉が使って、更に6年間妹が使ったランドセルは、世界一幸せなランドセルだったかもしれません。森下さん姉妹は、6年間毎日ランドセルを背負って運んだのは、教科書や文房具ばかりではなく、物を大切にする心と、姉妹愛とでもいうものだったのではないでしょうか。

 教科書と言えば、私にも一つ上の姉がいて、小学校ではそのお下がりの教科書を使っていました。当時の教科書は有料だったので、内容が変わらなければ、お下がりで間に合せようと親は思ったのでしょう。父は姉の教科書に紙でカバーをかけて、筆で教科名と名前を書いてくれるのでした。姉も教科書に線を引いたり落書きをすることなく、きれいに使っていました。私が譲り受けた時は、紙のカバーを外して使うのですが、ほぼ新品同様でした。姉もきれいに使っていたので、自分もそうするものだと思っていました。だから教科書は勿論、書物に落書きをすることは今もありません。「お下がり」それは単に物を引き継ぐというだけでなく、前の使用者の心を受け継ぐことでもあるのです。

 さて仏さまの供物を下げたものもお下がりと言います。お墓参りの時、その場で供物を下げていただきます。それは食べるという行為以上に、先祖さまからのお下がりをいただく、つまり先祖さまの心を受け継ぐと約束したことでもあるわけです。お下がりをいただいた限りは、大人になってランドセルを背負わずとも、その約束をキャンセルしないように心がけましょう。

 ここでお知らせいたします。4月のカンボジアエコー募金は、560回×3円で1,680円でした。ありがとうございました。
 それでは又、5月21日よりお耳にかかりましょう。

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