テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1252話】「命を数える」 2022(令和4)年10月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1252話です。
そのバスは、エンジンを切った後、運転手はアラーム音を切るために、後部まで歩いていく必要があります。多少面倒であっても、その往復の間に車内点検ができるからです。通園バスに子どもが取り残されていないか確認するための仕組みとして、アメリカで用いられています。通園バスの子ども置き去りは、日本ばかりではなく、各国で起きており、対策が講じられています。
わが国でも、痛ましい事故が後を絶ちません。昨年7月福岡県で、保育園のバスの中に朝から夕方まで取り残された5歳の男の子が熱中症で死亡しました。今年9月には静岡県の幼稚園で、3歳の女の子が、5時間もバスの中に放置されて、熱中症で死亡しました。当日の気温は30度を超えていました。
登園時バスを運転していたのは幼稚園の理事長で、派遣職員の女性も同乗していました。バスに乗った園児は6人です。わずか6人の子どもに目が届かないものでしょうか。バスの乗降の人数や、園内での出欠の点検のシステムが、ミスが重なり機能しなかったようです。
女の子は、バスに乗ったときは、6列ある席の前から5列目に座っていました。約5時間後の発見時は出入り口近くの3列目付近で、あおむけに倒れていました。何とか外に出ようとしたことでしょう。脱いだとみられる上着もありました。暑さに耐えきれず服を脱いだのでしょう。空の水筒も見つかっています。高温の車内では、あっという間に飲み干してしまい、どれほどお替りが欲しかったのかと思うと、惨過ぎます。心細さと暑さで泣き叫び、喉は一層乾いたはずです。
この事故に関して、ある先生の次のように新聞投書がありました。「先生が子どもを数えるとき、単に数を数えるのではなく、一人ひとりの命を数えるつもりでなければならない。一人ずつ子どもの肩をたたきながら、その命がしっかりあることを確認するように」と。
さて道元禅師は台所の教えを説いた『典座教訓(てんぞきょうくん)』の中で、「水を看(み)、穀を看るに、皆子を養うの慈懇(じこん)を存すべき者歟(ものか)」とお示しです。つまり、水や米を見るにつけても、わが子を養う慈しみ愛する気持ちで調理すべきということです。これを「老心」と言い父母の心です。親がわが子を思う気持ちで食材という命を扱いなさいともいえます。それは調理だけでなく、すべての命に対する心構えとして説いた教えです。
3歳の子どもには、命を感じさせるものがあふれています。泣いて笑っておしゃべりをし、食べて飛んで跳ねて、ことごとく命の営みです。だから、どの子どもに対しても、わが子を見る眼差しで、親切心を以って接することです。それは単に数を管理するシステム以上の効果があるはずです。この老心のシステムを「親切テム」と名付けたいくらいです。
それでは又、10月11日よりお耳にかかりましょう。
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