テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1233話】「当たり前という彼岸」 2022(令和4)年3月21日~31日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1233話です。

 正直言って、コロナ禍もウクライナ侵攻も、よそ事としか思えなくなりました。徳本寺の本尊さまが消えたのです。16日深夜に発生した福島県沖を震源とする震度6強の地震により、本堂内の仏像仏具が散乱しました。本尊さまは台座から落下して、須弥壇上で埋もれていました。

 6日前の3月11日東日本大震災の日に、復興祈願法要を終えたばかりです。それより、1年前の昨年2月13日に発生した東日本大震災の余震と言われる震度6強の地震被害から、やっと立ち直った矢先のことです。心が折れてしまいます。

 昨年も11年前も本堂の惨状は目を覆いたくなります。それでもこれまで本尊さまは、ほとんど動かなかったのですが、今回は台座が空座になったのです。位牌堂は昨年、位牌落下防止にテグス糸を回らしました。ある程度の効果はあったものの、かなりの位牌がまた落ちました。墓地も彼岸を迎えるというのに、墓石全体が大きくずれ、お骨が見えるところもあります。灯篭などはかなり倒れています。

 東日本大震災の震源域で次々発生している地震のようです。昨年はその余震と言われ、今回はその兄弟のような地震とか。地震のくせに、その絆は強く、ひび割れがないのです。ともかく周辺では活発な地殻変動が続いているといいます。コロナ禍と同じように、まだまだ終息には至らないのでしょうか。

 今回の地震発生時刻は夜11時36分です。間もなく日付が変わろうという頃です。私は夢の中にいましたが、飛び起きました。すぐ本堂等を点検しましたが、昨年の惨状の再現ドラマを観ているようでした。ちょっとの作業で元通りになるような状況ではありません。夜明けを待って本腰を入れようと仮眠しました。

 起きてびっくりです。朝5時前に新聞が届いていました。更にその新聞の一面から、「宮城・福島 震度6強」と3段抜きの見出しが目に飛び込んできました。本文は「第一報」程度で簡潔なものでしたが、地震発生時にはすでに予定の新聞は、印刷を終えていたのではないのでしょうか。それなのにギリギリの原稿を差し挟み、新たな紙面の新聞をいつものように販売店に届けるという離れ業、日ごろの鍛錬の賜でしょう。どんな事態であれ、その新聞を時間通り配達して下さる方がいるということに、今更ながら頭が下がりました。

 全ては当たり前のことです。当たり前のことが当たり前にできるまでには、そこに携わる人々が、どれだけ当たり前以上の努力をしているかを思い知らされました。道元禅師は「修行の彼岸に到るべしとおもふことなかれ。彼岸に修行あるがゆゑに、修行すれば彼岸到なり」とお示しです。修行により彼岸に到るのではなく、修行し続けているところに彼岸の世界が実現するということです。ぎりぎりまで新しい情報の紙面と格闘する記者、それを届けようという一念を貫く配達員、みな彼岸の世界を生きています。徳本寺の本尊さまも、今は何事もなかったかのように、きちんと鎮座ましましていらっしゃいます。この当たり前こそが彼岸の世界です。

 それでは又、4月1日よりお耳にかかりましょう。

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