テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1204話】「躑躅(つつじ) 2021(令和3)年6月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1204話です。

 ツツジの花は美しいですが、その名前の漢字は難しいです。私はたまたま「躑躅森(つつじもり)」さんという住職さんに出会い、その字を知りました。今でも辞書がないと書けません。「躑躅」という漢字は「てきちょく」とも読み、「いっては止まり、いっては止まりして進まない」という意味があるそうです。

 まさにその美しさを前に、足が進まなくなるようなツツジを見てきました。気仙沼市にある徳仙丈山のツツジです。日本最大級のツツジの名所だそうです。標高は711メートルですので、ハイキング感覚で、その美しさを愛でることができます。山の面積は約50ヘクタールで東京ドーム10個分に相当します。そこに約50万本のツツジが群生しているのです。下から見上げれば、新緑と燃えるような赤い花のコントラストに息をのむばかりです。山頂から眺めれば、果てしなく広がる赤いツツジの斜面の先に、気仙沼湾が見渡せます。そして、エゾハルゼミの鳴き声も響き、天地いっぱいの歓びが満ち溢れていました。

 徳仙丈山には昭和25年まで銅を採掘した鉱山がありました。昔は、屋根葺きや農耕馬用の草を集める山だったため、山焼きが行われました。また幾多の山火事や植林事業を経て、山頂一帯が「黒野牧(くろのぼく)」という土になりました。それがツツジの成長に適していたため、自生のヤマツツジの大群落になったといわれます。勿論、ツツジに魅了された先人たちが、下草刈りやツツジに絡まる蔦を刈る作業などを続けてきた地道な自然保護活動のおかげでもあります。

 徳仙丈山のツツジは、一株一株が背丈以上に大きくて圧倒されます。花の付き方も全然違います。大きな花の塊のようになって、枝葉が見えない程です。野生の花の命の勢いを感じます。庭先で育てられているツツジは、それなりに手入れされ、形も整えられていますが、華奢に感じられます。風雪に耐えて我が身を護り、仲間を増やし続ける野生の逞しさには敵いません。

 「峰の色 渓(たに)の響きもみなながら 吾が釈迦牟尼の声と姿と」曹洞宗を開かれた道元禅師のお歌です。「峰の色はお釈迦さまの姿、渓の響きはお釈迦さまの説法そのものである。この大自然がそのまま仏の心を示している」という内容のお歌です。翻って、我が身が清らかで、名利に囚われず、清々しい日々を送っていればこそ、大自然に仏を見出すことができるという意味でしょうか。自然は自分の美しさを誇ったりしません。人を選んでその美しさを隠したりもしません。ただ精一杯咲いているだけです。「ただ精一杯」を自然にできるようになれば仏さまです。徳仙丈山の自然の美しさを十分に堪能しつつじも、我が「てきちょく」人生は、一進一退の日々で、なかなか仏に辿り着けません。

 それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。

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