テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1201話】「皆勤賞」 2021(令和3)年5月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1201話です。

 私の中学高校時代には、無遅刻無欠席者には皆勤賞、遅刻はしたが無欠席者には精勤賞というのがありました。私は6年間無遅刻無欠席で皆勤賞になり、記念に18金のネクタイピンをいただきました。卒業年度の1968という数字も刻印されています。

 こんな手前味噌の話をしたのは、4月3日の河北新報に掲載された仙台市の木村大志さんの「無欠席誇り胸に高校進学」という投稿に触れたからです。「小学校・中学校の9年間一日も休まず登校したのに、皆勤賞の表彰がなかった。その理由としては、無理して登校し心身の調子を崩すことはない、休むことは悪いことではないとして、皆勤賞を取りやめる学校があるとのこと。無理して学校に行ったこともある自分の努力は間違っていたのかと思うこともあった。しかし、大事なのは自分の気持ちの持ち方だと気付き高校でも無欠席を貫くつもりです」というような内容でした。

 確かに、今の学校は通学すればいいという単純な環境ではないのでしょう。出席を強要したり、無欠席を称えることにより、何らかの理由で通学できかねる子どもを追い込んでしまうかもしれないことは理解できます。しかし、通学できかねる子どもへの配慮と同じように、通学しようと努力してきた子どもにも同じように配慮するのが教育でしょう。学力・体力・能力は人それぞれです。そして努力の差もそれぞれであることを認め合える学校や世の中でありたいものです。

 そこで、大志さんの9年間の努力を称えてあげたいと思い投稿しました。無欠席を貫けたのは、本人の強い意思と努力があったればこそです。加えて授かった健康な身体と支えてくれた家族や周りの人のおかげも忘れないでくださいとのメッセージを込めました。すると、他にも同じような思いの方がいて、「投稿への反響特集」として、私を含め3人の投稿が掲載されました。「継続する大切さを再認識」「子どもの努力 称賛も必要」と異口同音に大志さんを称えています。

 「努力とは息をするように続けられること。無理をしないこと。息をすることです」将棋の永瀬拓矢棋士の言葉です。事を始めた頃は「やってやるぞ」と意気込むこともあるでしょうが、ある程度続けていると、自然体になれるのかもしれません。大志さんは9年間で培った努力により、息をする感覚で通学を続けながら、充実した高校生活を送ることができると信じています。その事は長い人生の中で、大輪の花を咲かせる十分な肥やしとなることでしょう。

 さて私の皆勤賞のネクタイピンは、気恥ずかしくて一度も付けてはいません。しかしそのネクタイピンに見守られるようにして、このテレホン法話を33年間休まず続けてくることができました。ネクタイピンはネクタイを留めることはありませんでしたが、テレホン法話がみなさまの心の片隅に留まることがあったら幸いです。

 それでは又、5月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1363話】
「精進が良い」
2025(令和7)年11月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1363話です。 10月26日、関東・東北地方は朝から雨でした。それにもかかわらず、第19回テレホン法話ライブには、たくさんの方に参加いただきました。そこでみなさんに申し上げました。「何かの集まりの時、天気が良ければ、みなさんの日頃のご精進がよろしいようで、こんなにいい天気になりましたねと挨拶します。今日は何と言えばいいのでしょう... [続きを読む]

【第1362話】
「壁と扉」
2025(令和7)年10月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1362話です。 達磨さんは縁起物として知られていますが、インドから中国に禅の教えを伝えた曹洞宗の祖師です。菩提達磨大師といいます。赤い法衣に身を包み、面壁九年といわれるほど壁に向かって坐禅を組んでいました。その後ろ姿がいわゆるの達磨さんの形になっています。 坐禅は壁に向かって、ひたすら自分の... [続きを読む]

【第1361話】
「四足走行」
2025(令和7)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1361話です。 人類の祖先である類人猿が約700万年前に樹上生活から地上に降り、二本足で歩くようになったと言われています。この長い歴史を経て、走る速さも進化しています。現在人類最速の100㍍の世界記録は、2009年にウサイン・ボルトが出した9秒58です。 この二本足進化に逆行するかのように、... [続きを読む]