テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1195話】「10年ひと昔」 2021(令和3)年3月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1195話です。
「10年ひと昔」という言葉は、一時代前ということです。しかし東日本大震災に限っては、10年前も今も、つながっている現在と思わなければならないのでしょう。そんな2月13日に起きた震度6の「東日本大震災の余震」です。それでも時の流れは確かで、現在の小学生のほとんどは、大震災のことを実感としてわからない世代です。
さて、地元の坂元中学校は10年前の3月11日は、午前中に卒業式を終えて、午後には大震災の避難所になりました。少し高台にある学校から東側の海岸線を望めば、松林も民家も線路も流され、一面黒いヘドロの大地に変り果てました。これは現実なんだろうかという光景が広がっていました。
今や10年前と同じところに立っても、昔の故郷を偲ぶ景色は見られず、人が住んでいたところは広い畑や田んぼになっています。道路や河川も整備され、歳月なりの復興した姿です。しかし、その復興に反比例するかのように、過疎化と少子高齢化は進みました。震災がなかったとしても早晩危惧されたことが、大震災で加速したようです。
生徒数52人の坂元中学校は、町内での学校再編に伴い、3月末で74年の歴史に幕を閉じることになりました。その閉校式を2月20日に行う予定でした。ところが「震度6の余震」により、体育館のボルトの落下や照明器具の故障、屋根も破損し雨漏りもする状態になりました。式は延期したものの、体育館の復旧の見通しが立たず、会場の変更を余儀なくされました。
大震災の時は多くの避難者を受け入れ、極限の被災状況から、その命を守ってくれた学校です。中学校としての使命を終えて、生徒や関係者、故郷の方々から、感謝とお別れの言葉をかけていただけるはずだったでしょう。大震災からの10年間は、特別な経験をした子どもたちを、暖かく包み、励ます存在だったかもしれません。そして、これからも校舎としてあり続けたら、大震災を知らずに育ってきた子どもたちに、何がしかの教訓を残せたかもしれないのです。
それが何という巡り合わせでしょう。大震災の時は敢然と困難に立ち向かって、避難所となったというのに、中学校という役目を全うし、閉校式会場として有終の美を飾るはずが、10年目の余震の被害で、それを果たせないとは。10年間、少しづつ減っていく子どもたちを見守りながら、必死で耐えてきて、とうとう力尽きたかのようです。
昔ある先生が卒業式の最後の学級会でこう言いました。「幸せになりなさい。先生からの最後の宿題です。但し、提出期限は生きている間」。坂元中学校も、せめてあと10年も存続し、人々の関心を集め、「10年人向かし」続けてくれたら、人生の宿題を解いて、故郷を愛する子どもたちが、たくさん訪ねて来てくれたろうに、残念です。残された校舎に、しあわせな第二の人生はあるのでしょうか。
それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。
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