テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1194話】「10年目の余震」 2021(令和3)年2月21日~28日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1194話です。
「平成28年熊本地震」は、4月14日午後9時26分に震度7を記録しました。その2日後の午前1時46分にも震度7の地震が発生。震度7が2度も続くのは史上初めてといわれました。そして前に起きたのが「前震」で、後からのが「本震」だったというのです。震度7もの地震が、次に起こる地震の前触れとは誰も思わないでしょう。十分に「本物の地震」です。前震で何とか助かったと思った矢先に、また同じ程度の地震に襲われ、心が折れた人がたくさんいました。被害も拡大しました。
一方、2月13日午後11時7分に、福島県沖を震源とする震度6の地震が発生しました。震源地に近い徳本寺あたりは、大きな被害に見舞われました。家の中の散乱状態を見れば、10年前の東日本大震災が蘇ります。本堂の仏具類は倒れたり落ちたり、位牌堂の何百という位牌がすべて壇から落ちました。
そして驚くことに、今回の地震は、東日本大震災の「余震」だというのです。あの大震災から間もなく10年というタイミングで、まだ余震が、しかも普通の地震より大きなものが襲ってくるとは想定外でした。熊本で日を置かず大きな地震が発生したことも驚きですが、10年経っても威力の衰えない余震が襲ってくるとは、自然の脅威におののくばかりです。
この度は、津波がなかったので幸いでしたが、真夜中に起きたにもかかわらず、10年前の教訓が活かされたのか、意外と冷静に対応できました。人的被害がほとんど聞かれませんので安堵しています。大震災以降、地震に対する備えは、様々な面で進んでいます。例えば墓石の被害です。昔ながらの背の高い竿石や灯篭は、地震に一番弱いと言われてきました。徳本寺の墓地でも多数の被害がありました。そんな中で、ここ10年間で新しく建てた墓石や、補強が施されたところは、被害の程度が少ない印象です。当然家屋の建築においても、その事は当てはまるでしょう。
余震という言葉に惑わされてはいけません。本震で余った力だからとか、10年も経てばその元は消えてしまうなどと思わないことです。私はよく問いかけます。「余生を楽しむ」といいますが、余生という余った生命など、どこにありますか。私の命は少し余計だから、あなたに上げますと言えますか。私はもう少し長生きしたいので、あなたの命を譲ってくれませんか、とも言えないのです。
第一線を退いての、余生を楽しむということはわかりますが、命に余りはありません。いつも100%の我が命です。余震とて同じでしょう。100%地震という自然現象の力を秘めたものなんだと強く意識しなければなりません。常に100%の備えを心がけるべきでしょう。ああ、余生を楽しむことができなくなってしまいますね。
それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。

散乱した位牌堂の位牌

倒壊した墓地
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