テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1177話】「お地蔵さんのバトン」 2020(令和2)年9月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1177話です。
先日の暑い昼下がりのこと。Kさんという女性が訪ねて来られました。お地蔵さんの寸法を測らせてくださいというのです。そのお地蔵さんとは、30年前から山門前に立っている「わらしこ地蔵」のことです。それはお檀家のAさんご夫妻が、早くに亡くされた娘さんのご供養とすべての子どもたちの健やかな成長を願って建立されたものです。お地蔵さんの背中に幼子をおんぶしているちょっと珍しい姿です。
Kさんはお地蔵さんの頭巾と涎掛けを縫ってあげたいということでした。たいへん有り難いことなので早速お願い致しました。すると翌日には、完成品をお持ちくださいました。オーダーメイドされた頭巾と涎掛けは、お地蔵さまにピッタリです。幼子の頭には紅い毛糸で編んだ可愛い帽子をかぶせてくださいました。
お地蔵さまの頭巾は赤い色で、色が褪せやすいものです。Kさん曰く、「直射日光でも色褪せるし、お地蔵さんの石の熱でも褪せるので、布を二枚重ねにするといいですよ。時が経てば裏返しても使えますから」。また頭巾がよく風に飛ばされることもあったのですが、頭巾の紐と涎掛けを上手く結んで、工夫して下さいました。その手際の良さに感心致しました。さらに驚いたことは、Kさんのお歳が90歳ということでした。
さて、お地蔵さんはなぜ頭巾や涎掛けを着けているのでしょうか。お地蔵さんはお釈迦さまから未来へのバトンを託された方です。お釈迦さま亡き後、56億7千万年後に弥勒菩薩さまがお出ましになります。それまでの間、この世のあらゆる苦しみや悲しみを大地に包み込むように耐て、万物を育み見守る存在としてお地蔵さまは至る所にいらっしゃるのです。
どんな弱い者にも手を差し伸べてくださるということで、特に子どもを亡くした母親が、お地蔵さまに我が子の姿を重ねて、赤い頭巾や涎掛けを着けるようになったと言われています。赤は「赤ちゃん」という言葉の通り、子どもを表す色でもあります。更に古来日本では、疫病神が赤い色を嫌うと信じられていました。魔除け厄除けに赤い色は、よく使われています。
お地蔵さまが弥勒菩薩さまに渡そうというバトンは、この世で苦しむ人が一人でも残っている間は、最後までこの世に留まりますという大いなる慈悲心のことでしょう。今まさにコロナ禍のご時世にあって、誰一人としてコロナに感染していない状況が訪れるようにと世界中が願わなくてはなりません。それはお地蔵さまの慈悲心に通じるものです。そしてKさんの年齢も暑さも感じさせない慈悲心に溢れた赤い頭巾と涎掛けは、お地蔵さまの「Go To トラベル」のチケットにも思えました。それを身に着けたお地蔵さまは、慈悲のバトンを永劫の未来に渡さんと壮大な旅を続けて行かれます。
それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。

わらしこ地蔵

わらしこ地蔵
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