テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1158話】「心豊かなれば」 2020(令和2)年2月21日~29日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1158話です。

 津波で流された徳泉寺の復興を、震災犠牲者7回忌に当たる平成29年3月11日までに成し遂げられたら、願ってもない巡り合わせと考えました。事実前年の平成28年1月30日に大工さんと契約を交わしていたのです。しかし、現実的には無理でした。巡り合わせに偶然はなく、必然の結果です。

 徳泉寺ばかりではなく、夥しい家屋を再建しなければならない被災地の現状がありました。絶対的な大工さんの不足、更には資材調達の難しさ。それにしても、作業は遅れに遅れました。当初は平成30年5月までには完成するはずでした。しかし、それから1年経った平成31年というより令和元年の5月18日に、やっと上棟式に漕ぎつけたのです。そして半年以上かけて、この1月に完成しました。

 1年半以上も遅れれば、建て主としてはあせらずにはいられません。というのも、徳泉寺の復興は全国のみなさまから寄せられた「はがき一文字写経」によってなされているからです。延べ2200人の方の想いが込められているので、その方々に申し訳が立ちません。

 そんな時、ご自分も被災している総代さんがこう言いました。「檀家さんがまだ自分の家に住まいできないでいるのに、お寺だけ完成しても、素直に喜べないでしょう。工事が遅れてむしろ良かったかもしれない」。なるほどそうです。住職として建物に気をとられるあまり、檀家さんのことが見えていませんでした。大いに反省しました。

 そして気が付けば、檀家さんがそれぞれ落ち着いた頃から、工事が一気に進みました。更には、昭和63年1月に亡くなっている私の前の住職である祐光和尚様の33回忌が迫っていました。津波で流された本堂は、祐光和尚様の代の昭和50年に完成しました。当時の住職・檀家さんが心血を注いで建立された本堂だったはずです。それが跡形もなく流されてしまって、祐光和尚様にも檀家のご先祖さまに対しても、申し訳ない思いを抱いていました。

 それが巡り巡って、新たに再建された本堂の杮落として、祐光和尚様の33回忌の法要を1月26日に行うことができました。工事が遅れたおかげであり、必然の巡り合わせと言えるでしょうか。5間四方の本堂は、決して大きいとは言えませんが、何ら支障なく法要を営むことができました。

 「心貧しければ 大天地大ならず 心豊かなれば 小天地小ならず」自分のことしか考えられないのは、心貧しい人でしょう。天地の大きさを感じることもできないでしょう。たとえ小ぶりな本堂であっても、歴代の住職や檀家さんやその先祖さんを思いやることができる堂内であれば、十分に広さを感じられると自負しています。是非確かめにお参り下さい。3月11日から15日にかけて「徳泉寺復興感謝祭5DAYS」を開催致します。【詳細はコチラ】

 それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。



三十三回忌法要 献供


三十三回忌法要 拈香法語 

最近の法話

【第1337話】
「涅槃寂聴」
2025(令和7)年2月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1337話です。 「言っていることは聞こえていて、うなずくが、しゃべることはほとんどできない。目を開けるのも辛そうだった」。2021年11月9日に99歳で亡くなられた作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの病床での様子。最期まで看取った秘書の瀬尾まなほさんが伝えたものです。 死の1カ月ほど前に、一時退院して新聞連載の随筆を書き上げたのが最後... [続きを読む]

【第1336話】
「直心の交わり」
2025(令和7)年2月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1336話です。 「一河(いちが)の流れ掬(く)むにさえ 深き恵(めぐみ)と知るものを 真心こもる熱き茶に 疲れを癒す有難さ」という御詠歌『報謝御和讃』が此君亭に流れました。茶室で聴く御詠歌は初めてです。御詠歌が茶室に染み入るのか、茶室が御詠歌を唱える人々を包み込むのか、得も言われぬ雰囲気を醸し出... [続きを読む]

【第1335話】
「昭和100年に想う」
2025(令和7)年1月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1335話です。 今年2025年は昭和の年号で言い換えると「昭和100年」になります。私は昭和25年生まれで、西暦では1950年です。区切りのいい数字の年に生まれました。私にはもうひとつ区切りのいい年があります。それは昭和50年です。この年に大本山總持寺に上山して、僧侶としての修行の第一歩を踏み... [続きを読む]