テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1155話】「怨みなき空身」 2020(令和2)年1月21日~31日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1155話です。
「無辜の人」というときの「辜」という字は、「古い」と言う字の下に「辛い」と書きます。あまり馴染みがありません。それもそのはず、「人をはりつけにして、死体を乾かして堅くする」ということで、「重い罪」を表わすという物騒な意味があります。
「無辜」とは、罪がないことです。「無辜の民を戦禍に巻き込む」と辞書の例文にはあります。不幸にも、まさにその通りのことが起きてしまいました。1月8日朝、イラン国内でウクライナ航空機が墜落して、乗客乗員176人全員が死亡しました。ウクライナ・イラン・カナダ・イギリスなど、犠牲者の国籍は多岐にわたります。墜落現場には、ぬいぐるみも確認されて、幼い子どもも乗り合わせていたと思われます。理不尽にも、あっという間に、それぞれの日常が奪われてしまったのです。
原因はイランがミサイルを誤って発射したためです。イランはアメリカの攻撃から自国を守るため、隣国のイラクにあるアメリカ軍拠点を攻撃していました。その中で、防空システムがウクライナ航空機をアメリカ巡行ミサイルと認知してしまったのです。担当者がミサイル発射の許可を得ようとしましたが、上官に連絡が付かず、発射してしまったというのです。全くの人的ミスによる重大な誤りがもたらした大惨事です。
その元を辿れば、1月3日にアメリカ軍が、イランの革命防衛隊のソレイマニ司令官を無人機で殺害したことです。年明け早々先制攻撃を仕掛けて、物騒な「辜」なる存在を消滅させたとトランプ大統領は息巻いたことでしょう。当然イランも黙ってはいません。地対空ミサイルで報復攻撃を開始しました。そして、あってはならない無辜の民を戦禍に巻き込む悲劇を生んだのです。
人類の歴史は、戦いの歴史と言ってもいいのでしょうか。2500年前のお釈迦さまの時代でも、そういうことはあったのでしょう。『法句経(ほっくきょう)』に次のようにお示しです。「まことに、怨みごころは いかなるすべをもつとも 怨みを懐(いだ)くその日まで ひとの世にはやみがたし うらみなさによりてのみ うらみはついに消ゆるべし こは易(かわ)らざる真理(まこと)なり」。怨みをもっている限りはなくならい、怨みを捨てて初めてなくなるものだということです。誰でも怨みを懐くことはあるでしょう。それを捨てることができるかどうかが、その人の器とも言えます。
お釈迦さまと同じインドのタゴールの詩にはこうあります。「人びとはにくしみあい 殺しあった 大地は これを恥じて みどりの草をもって これを覆った」。イランの大地に散った176人の犠牲者が、みどりの草の代わりとなったとしたら、あまりにも悲しい話です。ご冥福を祈りつつ、今年こそ怨みを捨てて空身になって、軽やかにさわやかに生きたいものです。
それでは又、2月1日よりお耳にかかりましょう。
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