テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1123話】「星の玉手箱」 2019(平成31)年3月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1123話です。

 今から60年も前のこと。「星は何でも知っている」という淡いラブソングが流行りました。歌詞の意味も分からず、ほんとうにお星さまは何でも知っているのだろうかと、子ども心に思ったものでした。逆に私たちは星のことなど何も知らないのです。亡くなった人はお星さまになって、見守ってくれるから、などとおとぎ話のようなことを言うのが関の山です。

 おとぎ話といえば、「リュウグウ」と名付けられた小惑星に、探査機「はやぶさ2」が2月22日に着陸しました。リュウグウという名前は、竜宮城から付けられたものですが、水分が含まれると期待されてのことだそうです。生命そのものではなくても、生命の元になるものが見つかるかもしれないと考えられています。はやぶさ2は、小惑星の砂や石を採取して、地球に持ち帰るという、大きな使命を帯びています。それは、浦島太郎が竜宮城から玉手箱を持ち帰ったようになって欲しいという願いも込められているようです。

 それにしても、この度の着陸成功は、とてつもなく高度な技術によってもたらされました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、着陸を「バスケットボールのゴールを宇宙から狙うようなもの」と譬えています。2014年12月に打ち上げられたはやぶさ2は、3.4億キロ離れたリュウグウを目指して、太陽の周りを回りながら、約30億キロ飛行して、やっと辿り着いたのです。

 本来は昨年10月に着陸予定でしたが、リュウグウの地形が険しいことがわかり延期していました。その後、はやぶさ2から送られて来るデータを元に、地球上で岩一つ一つのの高さや形を10センチ単位で再現した三次元地図を作成しました。それをはやぶさ2に教え込ませ、着陸精度を当初の20倍に高めて決行されたのです。

 リュウグウは直径がわずか900メートルのそろばん玉のような形をしています。はやぶさ2はそこの着陸候補地点として、事前に落とした目印をめがけて、曲芸のような動きで、半径3メートルの領域に着陸したのです。機体の下にある回収装置から弾丸を発射して、砂や石を採取し保管庫に収められました。7月までにあと2回着陸を試み試料回収を行い、来年末に地球に帰還するそうです。

 果たして回収された砂や石から、どんなことが解明されるのでしょうか。現実に星になった人はいないとしても、地球以外にも生命の足跡が確認されたら、わが命は大宇宙の中のたった一つのかけがえのない存在なんだと実感できるような気がします。それともはやぶさ2の玉手箱を開けた途端に、一気に星のことが分かりすぎて、地球の命もあとわずかだなんてことはないでしょうね。でもそれはそれで、だって無常なんだから、ほしいままに生きてはいけないと受け止めましょう。

 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

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