テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1114話】「禅堂の完全試合」 2018(平成30)年12月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1114話です。
思えば野球の完全試合のようなものだったかもしれません。大本山總持寺で修行時代のこと。12月1日~8日まで、お釈迦さまが悟りを開かれた因縁に添って、摂心(せっしん)が行われます。摂心とは摂取するの摂に心と書き、心を摂(おさ)めて、気を散らさないということです。要するに朝4時に起きて、夜9時に寝るまで、ぶっ続けの坐禅三昧です。食事やお茶の時間もありますが、それも坐禅堂で坐ったまま行われます。
長い間坐禅をしていれば、気が散ったり、眠くなったりして、姿勢が乱れることがあります。その時、注意を喚起する意味で、警策(きょうさく)という棒で右肩を叩かれます。8日間もの摂心期間中、何度か警策を受けても不思議ではありません。しかしわがチームは、その年の摂心でとんでもない目標を掲げました。「一度も警策を受けずに摂心を全うしよう。しかもチーム全員で―」
そのチームとは、侍真寮(じしんりょう)という法要の中枢を担うところで、開山様にお供えをしたり、法要の諸準備や進行を采配する者が、十数名配役になっています。その全員が一度も警策を受けないというのは至難なことに思えました。しかし、先輩和尚の提言に逆らうわけにはいかず、摂心に突入しました。
案ずるより産むが易し、1日目2日目と全員落ち度なく、坐禅に集中できました。こうなると勢いがつくというか、みんながしっかり坐っているのに、自分だけ落伍するわけにはいかないという気持ちになりました。結果、全員が一度も警策を受けることなく、無事摂心を終えたのです。ひとりではできない、チームの力に因るところが大です。
お釈迦さまは6年間の苦行を体験したものの、悟りを得ることはできませんでした。苦行林を降りて、菩提樹の下で静かに坐禅を続けられ、その境地を深めていかれました。そして8日目の朝、東の空に瞬く明けの明星(金星)を見て、忽然とお悟りを開かれました。勿論この時代、警策などはなかったでしょう。警策を受ける受けないは、お悟りとは何ら関係がありません。
しかし、お釈迦さまとは格段に違うわれら凡夫は、せめてその型を踏襲するところから始めなければなりません。我がチームが完全試合を達成したかの如くの摂心を終えて、誰もが大いなる満足感と多少の自信を感じたことは事実です。
歌舞伎の中村勘三郎曰く「型があるから 型破りになる 型がなかったら 形無し」。坐禅の型をしっかり身につけ、日々修行することが肝心です。お釈迦さまを超えるような型破りは、求められていないでしょうが、形無しの坊さんは更に求められていないはずです。我がチームの完全試合は記録には残っていませんが、私の記憶に残り、和尚としての原点になっています。
それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。
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