テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1053話】「さいわいさ」 2017(平成29)年3月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

1053.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1053話です。
 彼岸に渡ると言いますが、彼岸とはどんな世界でしょう。反対の世界を考えると分かりやすいかもしれません。彼岸の反対は此岸・此の岸です。私たちの今いる現実の日々迷って不平不満が多い世界です。彼岸は迷いのない誰もが幸せを感じられる理想の世界と言えます。
 さて、お釈迦さまの十大弟子の一人アヌルッダは、お釈迦さまの説法中に居眠りをしてしまいました。それを恥じて、決して眠らないことを誓い、修行に励みます。とうとう睡眠不足から失明してしまいます。しかし、そのおかげで何でも見通す真理を見る天の眼・天眼を得て、天眼第一言われました。
 しかし、天眼の持ち主も針に糸を通すことは叶いませんでした。アヌルッダはお袈裟を縫おうとして、こう呼びかけました。「誰か親切の功徳を積み、幸せになりたい者がいたら、私の針に糸を通してくれませんか」すると「私が功徳を積ませていただこう」という声が聴こえました。その声は何とお釈迦さまでした。アヌルッダは驚き、「お釈迦さまともあろう方に、そのようなことをしていただくのはもったいないことです。第一、福徳円満のお釈迦さまが、これ以上の幸せを求める必要はあるのですか」と言いました。それに対してお釈迦さまは、「世の中の幸せを求める人の中で、私ほど真剣に幸せを求めている者はいないだろう」と答えました。
 「真剣に幸せを求める」というところが肝心です。自分だけが幸せであればいいというのではなく、みんなが幸せになって、初めて自分も幸せであるということです。みんなに幸せになっていただくために、即ち彼岸に渡っていただけるように、渡し守の役を果たすことも、仏の行いだというわけです。
 東日本大震災から丸6年が過ぎました。多くの方が被災地に足を運び、渡し守の役を果たして下さいました。被災した人もおかげさまで、少しずつ幸せと感じることができるようになっているのではないでしょうか。当たり前に幸せに暮らしていた生活が一瞬にして、ひっくり返されたような悲惨さを味わいました。しかし、真剣に幸せを求める人々が、次々と手を差し伸べてくれました。今度は被災地の私たちも真剣に幸せを求める時です。誰か困っている人がいたら、私たちもひっくり返ってたいへんな思いをしたけど、何とか立ち直ることができたのだから大丈夫と、手を差し伸べる番です。
 「幸」せという漢字は有り難いです。上下対称ですからひっくり返っても、「幸」せと読むことができます。もちろん「さいわい」と読んで、「さいわいさ」と言えば、これまたひっくり返っても「さいわいさ」と読めます。まるで、どんなにどん底に落ちても幸せは逃げないし、いつかはきっと幸せをつかむことができると、教えてくれているようです。
 それでは又、4月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1363話】
「精進が良い」
2025(令和7)年11月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1363話です。 10月26日、関東・東北地方は朝から雨でした。それにもかかわらず、第19回テレホン法話ライブには、たくさんの方に参加いただきました。そこでみなさんに申し上げました。「何かの集まりの時、天気が良ければ、みなさんの日頃のご精進がよろしいようで、こんなにいい天気になりましたねと挨拶します。今日は何と言えばいいのでしょう... [続きを読む]

【第1362話】
「壁と扉」
2025(令和7)年10月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1362話です。 達磨さんは縁起物として知られていますが、インドから中国に禅の教えを伝えた曹洞宗の祖師です。菩提達磨大師といいます。赤い法衣に身を包み、面壁九年といわれるほど壁に向かって坐禅を組んでいました。その後ろ姿がいわゆるの達磨さんの形になっています。 坐禅は壁に向かって、ひたすら自分の... [続きを読む]

【第1361話】
「四足走行」
2025(令和7)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1361話です。 人類の祖先である類人猿が約700万年前に樹上生活から地上に降り、二本足で歩くようになったと言われています。この長い歴史を経て、走る速さも進化しています。現在人類最速の100㍍の世界記録は、2009年にウサイン・ボルトが出した9秒58です。 この二本足進化に逆行するかのように、... [続きを読む]