テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1035話】「負んぶに抱っこ」 2016(平成28)年9月21日-30日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1035話です。
「負んぶに抱っこ」は辞書によれば、「すべて他人に頼りきりになること」とあります。その通りですね。念のため別の辞書を引くと、「子供を負んぶすれば抱っこと言う」ことから、転じて、「図にのってつけ上がること」とありました。なるほどそういう意味もあるのですね。
台風10号で甚大な豪雨被害を受けた岩手県岩泉町を、今月1日に政府調査団が視察に訪れました。団長は務台俊介・内閣府政務官兼復興政務官です。その際、入所者9人が亡くなった高齢者グループホームの現場に向かう時、何と務台政務官は政府職員に負んぶされて水たまりを渡っていました。長靴を履いていなかったためです。新聞に掲載されたその写真を見た読者は、「被災地のお年寄りが救助されたものかと間違えた」という投書を寄せています。
調査団というからには、一人二人ではないはず。その団長たる者が何たる体たらく。団体観光旅行の感覚で被災地を訪ねているかのと勘ぐりたくなります。被災地に対する思いやりのかけらも見えません。自分が被災してみなければ、実際の辛さや悲しさは分からないかもしれません。しかし、国の使命を帯びて被災地を訪れているなら、すべの困難を我がことと思って立ち向かっていただかなければ、被災者の為にはなりません。他人事という思いがどこかにあったからの失態です。
「菩提心を発(おこ)すというは、己(おの)れ未(いま)だ度(わた)らざる前(さき)に一切衆生を度(わた)さんと発願し営むなり」と修証義というお経にあります。「度(わた)す」とは、迷いある現実の世界から、悟りの世界である彼岸へ渡してあげることです。つまり、仏の教えに適う行いとは、自分が救われるより先に、周りの人々を救うべく力を尽くそうと願いをたてることであるというのです。被災地という現実でいえば、犠牲になった方を悼み、困難に陥っている人の為に、自分も泥にまみれて、少しでも力になろうとすることが、仏の心だということでしょう。自分が負んぶされて先に渡るなどあり得ません。
務台政務次官は調査団団長とはいえ、すべてがお膳立てされた中での行動ともなれば、負んぶに抱っこと図にのってしまわないとも限りません。自分では何もしようとしないから、長靴などはなから眼中になかったのでしょう。これからはご自分の足元をしっかり見つめ、行いを顧みる「脚下照顧」という禅語も長靴と一緒に持ち歩くことをお勧め致します。負んぶしたいのも、負んぶに抱っこしたいのも、被災者こそです。
ここでお知らせ致します。第10回テレホン法話ライブを、10月2日(日)午後2時徳本寺にて開催致します。特別ゲストは"歌う尼さん"やなせななさんです。入場無料。ピアノ演奏に合わせてテレホン法話を語ります。ご来場をお待ち申し上げます。
それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。
最近の法話
【第1368話】
「後期高齢者」
2025(令和7)年12月21日~31日
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1368話です。 先月75歳の誕生日を迎えました。いただいたプレゼントは、後期高齢者医療資格確認書です。まだ現役の住職ですし、高齢者だからと甘えてはいられません。それでも年齢は正直です。 亘理郡内に曹洞宗寺院が13カ寺あります。私が徳本寺・徳泉寺という2カ寺の住職を勤めていますので、住職は12人です。その中でいつの間にか最年長に... [続きを読む]
【第1367話】
「安青錦」
2025(令和7)年12月11日~20日
住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1367話です。 野球の本場アメリカで、アメリカ人以上の活躍をする日本人の大谷翔平。一方、国技である相撲では、ウクライナ出身の安青錦(あおにしき)が、九州場所で初優勝を果たし、大関に昇進しました。 安青錦の祖国ウクライナにロシアが侵攻し始めたのは、3年前の2022年のこと。出稼ぎをしていた母を... [続きを読む]
【第1366話】
「濁れる水」
2025(令和7)年12月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1366話です。 〈濁れる水の流れつつ澄む〉自由律の俳人山頭火の句です。山頭火は大正14年43歳の時、出家して曹洞宗の僧侶となりましたが、住職になることはありませんでした。44歳から行乞放浪の旅に出ます。「漂泊の俳人」とも称されました。 晩年は愛媛県松山市に「一草庵」という庵(いおり)を結びま... [続きを読む]
テレホン法話
~3分間心のティータイム~
- 2025年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2024年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2023年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2022年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2021年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2020年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2019年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2018年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2017年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2016年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2015年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2014年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2013年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2012年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2011年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2010年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2009年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2008年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月