テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第960話】「クローズアップ」 2014(平成26)年8月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

960.JPG
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第960話です。
 毎年夏になると、今年は何度目の原爆記念日とか終戦記念日と報じられ、人々は特別な想いをもってその日を迎えます。東日本大震災もそれと同じかもしれません。今年は大震災から4度目の夏とか4度目のお盆を迎えてということで、大震災のその後がクローズアップされました。
 お盆を控えたある日、NHK仙台放送局から二つのテレビ取材の依頼がありました。一つは大震災でお墓が流された方のお盆のお参りについて。もう一つは寺が流されて再建に苦慮しながらも、お盆を迎えなければならないという状況についてでした。
 お墓の件では、徳本寺の中浜墓地が津波で壊滅状態になり、3年以上の歳月がかかったものの、やっと造成移転が完了し、新しいお墓で初めてのお盆を迎えるというタイミングでした。たまたまお盆の13日に、Kさんのお宅では新しい墓石を建立したので、その御真入れ(入魂式)と納骨の供養を行うことになっていました。Kさんは夫と姑さんを津波で亡くしました。お墓も流されたため納骨できないままでした。「お盆に間に合って落ち着くべきところに落ち着いて、震災以後こんなにうれしいことはありません。安心しました」と仰っていました。
 この様子が午後2時と夜7時の全国ニュースで採り上げられました。関東方面にいるKさんの親戚の方々から電話があったそうです。「復興した元気な姿を見ることができて良かった。遠くにいてもお墓にお参りしたつもりで手を合わせました」などと言われ、Kさんはこれまでの辛い日々を乗り越えて、よくぞここまで来たということを実感したようでした。
 もう一つの流された寺の再建については、兼務する徳泉寺の状況についてです。これも同じ日の「ニュースウオッチ9」の中で全国に放映されました。徳泉寺は津波で本堂などの建物すべてが流されました。檀家さんも被災しているので、寺の再建は前途多難です。しかし、ほんとうの故郷の姿を想う時、祈るところの復興もなくてはなりません。その為の「はがき一文字写経」を全国に呼びかけたところ、北海道から沖縄まで1200件(3900口)を超える納経志納金が寄せられています。そのような実状を訴えたのでした。
 このニュースを全国でどれだけの人が見たのかはわかりませんが、放送直後からインターネットでの写経申込が続々届きました。さすがNHK、さすが全国ニュース、さすがお盆というタイミングです。これからも震災から何度目のお盆ということで、震災を忘れないためにも、様々なことがクローズアップされることでしょう。個々人の復興の実感はまだまだ乏しいものがあります。復興への道のりは平たんではありません。そこを歩かなければならない被災地の苦労の数々を、画面にアップしていただけば、これがほんとうのクローズアップで、震災風化の歯止めになることでしょう。
それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1363話】
「精進が良い」
2025(令和7)年11月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1363話です。 10月26日、関東・東北地方は朝から雨でした。それにもかかわらず、第19回テレホン法話ライブには、たくさんの方に参加いただきました。そこでみなさんに申し上げました。「何かの集まりの時、天気が良ければ、みなさんの日頃のご精進がよろしいようで、こんなにいい天気になりましたねと挨拶します。今日は何と言えばいいのでしょう... [続きを読む]

【第1362話】
「壁と扉」
2025(令和7)年10月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1362話です。 達磨さんは縁起物として知られていますが、インドから中国に禅の教えを伝えた曹洞宗の祖師です。菩提達磨大師といいます。赤い法衣に身を包み、面壁九年といわれるほど壁に向かって坐禅を組んでいました。その後ろ姿がいわゆるの達磨さんの形になっています。 坐禅は壁に向かって、ひたすら自分の... [続きを読む]

【第1361話】
「四足走行」
2025(令和7)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1361話です。 人類の祖先である類人猿が約700万年前に樹上生活から地上に降り、二本足で歩くようになったと言われています。この長い歴史を経て、走る速さも進化しています。現在人類最速の100㍍の世界記録は、2009年にウサイン・ボルトが出した9秒58です。 この二本足進化に逆行するかのように、... [続きを読む]