テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第923話】「彼の一樹」 2013(平成25)年8月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

923_17.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第923話です。
 南北に長い日本列島で、気候の違いがあるとはいえ、昨今の気象状況は異常と感じます。38度を超える猛暑の所があるかと思えば、1時間に120ミリを超える大雨が降っている所もあるのです。それに伴って、注意の呼びかけも直接的な表現になっています。「命を守る行動をとって下さい」とか「無理な外出は控えて下さい」というようにです。もはや、夏の風情など感じている間はありません。
 それでも、やはり蝉の声を聞きながら、縁側でスイカを頬張るなど、いかにも夏らしいではないですか。夕方になれば、蚊取り線香が漂う中、盆提灯を点して、亡き人をお迎えする。何と言っても、お盆は夏の主役です。特に今年は大震災で亡くなられた方は、3度目の里帰りということになります。
 最初の年は、世の中全体がまだまだ混乱状態で、どこに里帰りしていいのか戸惑ったかもしれません。お迎えする方も、亡くなったということをまだ納得できていない状況だったでしょう。昨年は里帰りする人は、みんな元気にやっているだろうかと心配し、我々は元気に生きている姿を見せなければ、亡き人に心配をかけることになるから、しっかりお迎えしようとしました。
 3回目の今年はどうでしょう。故郷の景色は明らかに変わってきました。まだ十分に納得できるものではないものの、前進はしています。その中で、特筆すべきは、自宅もお墓も流され、元の屋敷は災害危険地域になって、新たな住まいがまだ決まらないという方でも、先ずお墓だけはということで、このお盆まで多くの方がお墓を整えられました。たいへんな目に遭いながらも、こうしていられるのはご先祖さまに守られているからだという思いの顕れでしょう。
 「炎天に そよぎをる 彼の一樹かな」高浜虚子。暑い時、木陰に涼めば誰しもほっとします。陰の有り難さをしみじみ感じるときです。「彼の一樹」とはご先祖さまにも思えます。暑いにつけ寒いにつけ、私たちをいつも見守って下さっている。炎天下の木陰に安らぐように、ご先祖さまのおかげで、困難な中でも息をついている今の私がいます。異常気象や想定外の大震災に襲われても、「彼の一樹」は揺るぎません。彼の一樹が立つ故郷だから、必ず復興します。そんな思いを、里帰りしたご先祖さまに伝えられるようなお盆でありたいものです。
 そしてご先祖さまは、異常気象の注意を喚起するそれ以上の想いを持って、みなさんに呼びかけています。「自分の命はたった一つ。どんなときにも大切にしなさい」「外に出たら、自分一人では生きられないことを自覚して、思いやりのある行動をしなさい」。ほんとうにご先祖さまは、やさしい気性の持ち主でした。
 ここでご報告致します。7月のカンボジア・エコー募金は、120回×3円で360円でした。ありがとうございました。
 それでは又、8月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1367話】
「安青錦」
2025(令和7)年12月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1367話です。 野球の本場アメリカで、アメリカ人以上の活躍をする日本人の大谷翔平。一方、国技である相撲では、ウクライナ出身の安青錦(あおにしき)が、九州場所で初優勝を果たし、大関に昇進しました。 安青錦の祖国ウクライナにロシアが侵攻し始めたのは、3年前の2022年のこと。出稼ぎをしていた母を頼って、ドイツに避難しました。しかし... [続きを読む]

【第1366話】
「濁れる水」
2025(令和7)年12月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1366話です。 〈濁れる水の流れつつ澄む〉自由律の俳人山頭火の句です。山頭火は大正14年43歳の時、出家して曹洞宗の僧侶となりましたが、住職になることはありませんでした。44歳から行乞放浪の旅に出ます。「漂泊の俳人」とも称されました。 晩年は愛媛県松山市に「一草庵」という庵(いおり)を結びま... [続きを読む]

【第1365話】
「茶禅一味」
2025(令和7)年11月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1365話です。 茶室は室町時代末期から発展しましたが、その起源は禅宗のお寺にあります。住職の居住する「方丈の間」を標準にしています。方丈とは一丈四方の大きさ、つまり4畳半の部屋です。因みに禅宗の住職の尊称である「方丈さま」の由来でもあります。 日本のお茶の祖と言われるのは臨済宗の栄西です。栄... [続きを読む]