テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第804話】「春の椿事」 2010(平成22)年4月21日-30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第804話です。
「春の椿事」とも言うべきでしょうか。4月17日に東北地方は季節外れの雪に見舞われました。仙台では13日に桜の開花宣言がなされたばかりでした。「開花宣言後」の積雪は30年ぶりだそうです。徳本寺の周辺も5〜6センチは積もりました。桜ならぬ白い雪の花が咲きました。ちょうど土曜日でしたので、何件かご法事がありました。案の定、遠くから出席なさる方の中には、時間に遅れた人もいらっしゃいました。車のタイヤを夏タイヤに交換したばかりだったのに、また冬タイヤに履き替えてきたなどという方もいたほどです。
20100421.jpgご法事などの人寄せの時は、お天気が良いに越したことはありません。だからよく、お天気が良い時の集まりでは、「お集まりのみなさんの日頃のご精進がよろしいので、このような晴天に恵まれまして何よりです」などと挨拶を致します。その論理で言えば、この間の雪のような時は「みなさんの日頃のご精進が悪いので、このような悪天候になったのでしょうか」と、挨拶しなければならないでしょうか。まさか、そんなことを言う人はいないでしょう。
むしろ、悪天候の時でもお墓参りをする方こそ、ほんとうに精進が良いというべきです。ぽかぽか陽気の時に、お墓参りをするのはたやすいことで、誰でもできます。雪が降ろうが、寒かろうが、亡き人を思えば、何としても今日お参りをしなければならないと決心して、実行できる人は、日頃よほど精進しているからです。
「精進」とは、簡単に言えば、一所懸命に努力をするということです。元々は仏教用語で、人間の苦悩を滅するために勇敢に立ち向かってゆく正しい努力を指します。「精進」の原語である「ヴィーリヤ」には、「雄々しさ」「勇気」「力」などの意味があります。そこから、「精進」とは、心を励まして仏道に進むことと言えます。
日頃から、信心を深めご先祖さまを敬っているからこそ、雪が降ってでも勇気を持ってお参りに行こうという気持ちになれるのでしょう。「春の椿事」も、良い方に気持ちをチェンジすれば、心の花の「開花宣言」が、仏さまより下されるはずです。
それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1344話】
「懺悔という姿勢」
2025(令和7)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1344話です。 「あなたは仏教徒ですか」と尋ねられて、「ハイそうです」と答えられる人は幸いです。たいていの人は「お寺にお参りはするけど、仏教徒という自覚はちょっと・・・」と答えるかもしれません。 曹洞宗には授戒会という法要があります。1週間かけて修行を重ね、仏弟子となった証の血脈(けちみゃく)を授かるのです。授ける人を戒師、授... [続きを読む]

【第1343話】
「武士道と茶室」
2025(令和7)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1343話です。 「武士道とは、死ぬことと見つけたり」『葉隠』の冒頭にある一節です。これは実際に死ぬというより、常に死を覚悟すべしということです。それにより一切の迷いがなくなり、思う目的に力を尽くせます。 そんな武士道を思わせる講談を聴く機会がありました。社会人講談師村田琴之介の「伊達の血筋を... [続きを読む]

【第1342話】
「無憂樹」
2025(令和7)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1342話です。 お釈迦さまが生まれたところにあった木は、無憂樹。悟りを開いた所にあった木は、菩提樹。亡くなった所にあった木は、沙羅双樹。これを三大聖樹と言います。無憂樹はインドでは、字の如く憂いの無い木ということで、乙女の恋心を叶えるなど、幸福の木とされます。 さて、4月8日はお釈迦さまがお... [続きを読む]