テレホン法話
~3分間心のティータイム~

第745話「合掌(がっしょう)・決勝(けっしょう)・吉祥(きっしょう)」 (2008.9.1-9.10)

 北京オリンピック第13回目、ソフトボール日本チームは、変則トーナメントの準決勝で、アメリカに延長9回の末、1対4で敗れました。その約4時間後、更なる死闘が待っていました。
 決勝進出をかけてのオーストラリア戦です。上野投手の力投もあり、2対1でリードし、最終回の7回表オーストラリアの功撃もツーアウト。あと1人のアウトで勝利を手にするというとき、同点ホームランを打たれ、延長戦へ。11回表オーストラリアが1点勝ち越し。しかし、その裏日本も1点返し、再び同点。12回裏、日本はワンアウト満塁の好機に西山選手が右中間にサヨナラヒットを放って、3時間半近い激戦に決着をつけました。
 この時、サヨナラのホームベースを踏んだのは3塁ランナーだった三科選手です。彼女はサヨナラゲームの歓声が沸く中、ちょこんとホームベースに乗り記念すべき1点を印しました。そして、何とホームベースに向って、手を合わせ、頭を下げたのです。
 長かった戦いがやっと終わったという思いで、お世話になったグランドに感謝の気持ちを表したのでしょうか。チームメイトの粘り強い戦いを称えたのでしょうか。あるいは、相手チームに対して労をねぎらったのでしょうか。いずれにしても、とてもさわやかな合掌の姿でした。
 オリンピックはじめ、様々な試合で、日本人も外国人も勝利すると、握りこぶし高く掲げ、いわゆるガッツポーズを取る人がほとんどです。中には、外国選手で敬虔なクリスチャンなのでしょうか。胸のところで十字を切る人も見かけます。
 スポーツほど自分の実力に頼らざるを得ないものもありません。
 どんなにすばらしい監督がいて、何万人の応援があったとしても、試合上では、誰も手を貸してはくれません。自分の力で闘うだけです。それでも実力を発揮できるのは、目に見える見えないにかかわらず、多くのおかげがあればこそなんだと、感謝の気持ちを忘れないことは大事です。自分の力プラスおかげの力があると思えば、これほど頼りになるものはありません。おかげは無限なのですから。
 三科選手のホームベース上の合掌は、またこのホームに帰ってくるから見守っていてね、と言っているかのようでもありました。事実、翌日のアメリカとの決勝戦で、三科選手は3回表2塁打を放ち、先制のホームを踏みました。それは金メダルへの確実な一歩となりました。合掌は決勝につながり吉祥をもたらしようです。
 それでは、又9/11よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1344話】
「懺悔という姿勢」
2025(令和7)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1344話です。 「あなたは仏教徒ですか」と尋ねられて、「ハイそうです」と答えられる人は幸いです。たいていの人は「お寺にお参りはするけど、仏教徒という自覚はちょっと・・・」と答えるかもしれません。 曹洞宗には授戒会という法要があります。1週間かけて修行を重ね、仏弟子となった証の血脈(けちみゃく)を授かるのです。授ける人を戒師、授... [続きを読む]

【第1343話】
「武士道と茶室」
2025(令和7)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1343話です。 「武士道とは、死ぬことと見つけたり」『葉隠』の冒頭にある一節です。これは実際に死ぬというより、常に死を覚悟すべしということです。それにより一切の迷いがなくなり、思う目的に力を尽くせます。 そんな武士道を思わせる講談を聴く機会がありました。社会人講談師村田琴之介の「伊達の血筋を... [続きを読む]

【第1342話】
「無憂樹」
2025(令和7)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1342話です。 お釈迦さまが生まれたところにあった木は、無憂樹。悟りを開いた所にあった木は、菩提樹。亡くなった所にあった木は、沙羅双樹。これを三大聖樹と言います。無憂樹はインドでは、字の如く憂いの無い木ということで、乙女の恋心を叶えるなど、幸福の木とされます。 さて、4月8日はお釈迦さまがお... [続きを読む]