テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1374話】「拈華微笑」 2026(令和8)年2月21日~28日

 

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1374話です。

 お釈迦さまといえば、両手を組んで坐禅をしている姿が一般的です。徳本寺の本尊はお釈迦さまですが、「拈華微笑の釈迦」といわれます。右手に優曇華の花を持っています。それには次のような話があります。

 お釈迦さまが霊鷲山(りょうじゅせん)で大勢の人を前に説法をなさろうとした時、右手に持った一輪の優曇華を拈(ひね)って瞬きをしました。誰もがわけもわからずポカンとしていました。しかし摩訶迦葉だけがにっこり微笑んだのです。その時お釈迦さまの心をすっかり理解できたのは摩訶迦葉だけであるとして、仏法の奥義を授けました。それは以心伝心ともいえます。仏法の真髄は、言葉や文字では伝えきれないほど、奥深いことを示しています。

 先日徳本寺副住職が拈華微笑の本尊さまの前で仏前結婚式を挙げました。その時、式師のお諭しの言葉で、拈華微笑の逸話を引きながら、次のように申し上げました。「二人は拈華微笑のお釈迦さまと摩訶迦葉の如く以心伝心を経て今日の日を迎えたことでしょう。それは一過性のものではなく、これからもそのことを常に意識した生活をして下さい。例えば、私が頬をつねったとします。痛いのは私だけで、見ている人は痛みを感じません。ただ「痛そう」と思ってくれる人はいるかもしれません。それは少し私に関心があればこそです。全然関係のない人は、私が頬をつねろうが叩こうが、一切関知せず他人事(ひとごと)です。しかし以心伝心の域にある人は、私が頬をつねった時、「痛そう」ではなく、間髪を入れず心から「痛い!」と我がこととして体得できます。まさに一心同体の境地です」

 更にこれからお寺に住む者として、檀家さんや社会への対応が求まられますが、その心構えの一端を話しました。「龍樹の言葉に『僧 仏に向かえば 衆生 僧に向かわず 僧 衆生に向かえば 衆生 仏に向かう』とあります。和尚さんが仏の修行だけをしていては、人々は誰も和尚さんについて来ない。和尚さんが人々に寄り添えば、和尚さんを介して人々は信仰心を持つようになるということでしょうか。和尚さんだから坐禅もしなければなりませんが、坐禅だけして、境内の掃除を怠って草茫々では、お寺に来る人はいなくなります。悩み苦しんでいる人に手を差し伸べる和尚さんがいればこそ、お寺を訪ねて本尊さまにも手を合わせてくれます」

 幸い二人は徳本寺において、日々拈華微笑のお釈迦さまに手を合わせることができます。以心伝心の想いを二人だけに留めることなく、広く人々の心にも思いを馳せてくれることを願っています。お釈迦さまは拈った花で、摩訶迦葉の微笑みを導きました。これから二人は多くの人々を笑顔にするために、その手に何を持つことになるのでしょうか。その一捻りに期待しましょう。

 それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。

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