テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1347話】「ひきくらべる」 2025(令和7)年5月21日~31日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1347話です。

 八つ当たりの「八」は「四方八方」の意味で、誰かれなく時ところを選ばず、当たり散らすことです。自分自身の四苦八苦の苦しみを、どうにも解決できずに、自暴自棄になっているふるまいです。

 5月1日大阪市で、下校中だった小学2年・3年の児童7人が、学校近くの道路で、突っ込んできた車にひかれました。1人はあごを骨折する重傷で、他は打撲などの軽傷でした。殺人未遂で現行犯逮捕されたのは28歳の東京の男性。「苦労せず生きている人が嫌だった。全てが嫌になり人を殺そうと車で突っ込んだ」という供述をしていて、無差別に児童を襲ったようです。わざわざ東京から大阪まで来て、レンタカーを借りてまでするようなことでしょうか。身勝手にもほどがあります。

 5月7日には東京メトロ東大前駅で、大学生の男性が刃物で切り付けられる事件がありました。殺人未遂で現行犯逮捕されたのは、長野県の43歳の男性。「親から教育虐待を受け、不登校になり苦労した。東大を目指す教育熱心な親たちに度が過ぎると、私のように罪を犯すことを世間に示したかった」と供述しています。これまた自分勝手な思い込みを、どうにも処理できなくて、他に八つ当たりしている姿です。

 5月11日千葉市では、自宅近くを歩いていた84歳の女性が突然刃物で背中を刺されて死亡しました。殺人容疑で逮捕されたのは、市内に住む中学3年の15歳の少年です。少年と被害者には面識がなかったようです。そして「誰でもよかった」という供述をしています。少年は祖父母と父親と同居しています。しかし、家出をしたり、夜遅く帰宅したりという問題を抱えてはいました。祖母は言います。「誰でもよかったなら私を殺してほしかった」。切ない言葉です。

 さて、お釈迦さまの言葉である『法句経』に、「すべての生きものにとって生命(いのち)は愛おしい 己が身にひきくらべて 殺してはならぬ 殺さしめてはならぬ」とあります。殺すことは勿論、殺させるべきではないということです。「己が身にひきくらべて」つまり自分の身を殺される側に置いて想像してみればわかります。殺される人はどれほどの恐怖を感じるか、そして周りにどれだけ悲しむ人がいるのかを思えば、殺す側に立てるわけがありません。犯人だって自分の命は愛おしいはずです。

 八つ当たりというには、あまりにも惨い事件が続きましたが、どうしても自分だけが辛いとか苦しいという思いに凝り固まると、八方塞がりになってしまいます。その壁はどんな八つ当たりを以ってしても突き破ることはできません。ならば壁を飛び越えることです。そのためには、己が身にひきくらべる想像力というエンジンと、どんな命をも愛おしむ翼と相手の痛みを共感できる翼を備えましょう。そして飛行機に滑走の時間が必要なように、八つ当たりする前に、冷静に周りを見渡すことです。空が見えたらしめたものです。さあ飛び立つ時です。

 それでは又、6月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1376話】
「駅伝と復興」
2026(令和8)年3月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1376話です。 今年1月18日に広島市で第31回全国都道府県対抗男子駅伝がありました。宮城県代表チームは2時間16分55秒の大会タイ記録で悲願の初優勝を果たしました。この駅伝の特徴は中学生から社会人までの世代を超えたチーム編成にあります。7区間48㎞を1区4区5区は高校生、2区6区は中学生、3区7区は大学生か社会人が走ります... [続きを読む]

【第1375話】
「被災地のトランペット」
2026(令和8)年3月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1375話です。 東日本大震災で失われたものは数え切れません。しかし大震災後に新たにできたものもあります。たとえば「避難丘」という津波襲来時の一時避難場所となる築山です。町内の沿岸部に3カ所設けられています。そのひとつが「笠野避難丘公園」で、徳本寺の末寺徳泉寺の近くにあります。 徳泉寺は海... [続きを読む]

【第1374話】
「拈華微笑」
2026(令和8)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1374話です。 お釈迦さまといえば、両手を組んで坐禅をしている姿が一般的です。徳本寺の本尊はお釈迦さまですが、「拈華微笑の釈迦」といわれます。右手に優曇華の花を持っています。それには次のような話があります。 お釈迦さまが霊鷲山(りょうじゅせん)で大勢の人を前に説法をなさろうとした時、右手に持... [続きを読む]