法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第1085話】 「象の鼻にある花」 2018(平成30)年2月11日-20日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1085話です。

 今から50年以上前、イラン北部のシャニダール洞窟で、ネアンデルタール人の遺跡が発見されました。埋葬されたネアンデルタール人の周りには、たくさんの花粉がありました。キンポウゲやノボロギクなどです。研究者は「旧人たちが死者に花をささげていた」と発表しました。5万年以上前の旧人も死者を花で包んで埋葬したと、多くの人が感動しました。その後「花の埋葬」については、専門家から疑義が出ているとはいえ、遥かな祖先に、私たちに通じる心情の芽生えがあったように思えて、ロマンを感じます。

 さて、歴史は進み今から2500年前のこと。お釈迦さまは2月15日に、クシナガラの沙羅双樹の林の中で、80歳で亡くなられました。頭を北にお顔を西に向けて横たわっているお釈迦さまを囲むようにして、お弟子さんをはじめとするたくさんの人々や、鳥や動物たちも集まって、嘆き悲しんでいます。更には、8本の沙羅双樹のうち、4本は泣き枯れたかのように白茶けた色になっています。

1085_1.jpg そのようなお釈迦さまの最期のご様子を描いた涅槃図(ねはんず)を、お寺ではこの時期に掲げて、ご遺徳を偲びます。お釈迦さまが亡くなった時、「大地は一時に震動し、天鼓(てんく)は自然に鳴り響き、須弥山(しゅみせん)はにわかに揺るぎ出した。そして天地いぱいに嘆きの声が満ちた」というたとえで伝えられています。まさに「天地いっぱいの嘆き」を表した絵が涅槃図です。

 徳本寺の涅槃図は、183年前の江戸後期天保6年に描かれたものです。その中には、46種類の鳥や動物がいます。大きいのは象、小さいのは蝶やカタツムリまで。特に興味深いのは、花を携えている動物がいることです。1085_2.jpg白い象は、2本の牙を天に向けて泣いていますが、長い鼻の先で、一輪の花をつかんでいます。イタチと思しき動物も、口に一輪花を咥えています。鹿と水牛もそれぞれ、一輪の花を咥えています。花を持つ動物を、ほかの涅槃図では、あまり見かけません。

 いかに「天地いっぱいの嘆き」とはいえ、動物たちまで悲しんで泣くというのは、普通ではあ得ません。ましてや、お花を持って参列するなど、人間ならともかく、動物では更にあり得ません。しかし、この涅槃図を描いた作者は、4種類の動物を使って、お釈迦さまにお花を供えさせようとしたのです。二重三重のあり得ないことを描くことにより、お釈迦さまの死という一大事を強調しようとしたのかもしれません。何より、5万年前の旧人の「花の埋葬」のように、死に対する悼みを、花の美しさで和らげようとしたのではないでしょうか。花は飾って鑑賞するばかりではなく、悼みを和らげる緩衝材として、人類の歴史と共にあるかのようです。

 ここでお知らせ致します。1月のカンボジア・エコー募金は、191回×3円で573円でした。ありがとうございました。

 それでは又、2月21日よりお耳にかかりましょう。

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