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【第1056話】 「日本人好み」 2017(平成29)年4月21日-30日

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1056.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1056話です。

 いろいろな日本人好みがありますが、花なら桜でしょうか。開花宣言を待ちわび、花見に浮かれ、その散り際の潔さにも、日本人としての心情を重ねたりします。徳本寺の桜がやっと咲き始めた4月10日、フィギアスケートの浅田真央さんが引退を表明しました。

 彼女の実績は今さら言うまでもありません。5歳でスケートを始め、12歳の時、女子で世界初の3回転ジャンプ3回転連続コンビネーションを決めました。以来14年間にわたって、世界的なスケーターとして、一心に注目を集めてきました。特にその顔立ちや笑顔が日本人好みといわれます。そこへきて、実力は世界のトップレベルとなれば、人気が出ないわけがありません。他の分野の女性と比べても、飛び抜けて好感度は高いという調査結果もあります。

 大リーガーのイチロー選手は言います。「練習しないで、プレーできる選手を天才と呼ぶなら、僕は天才でないですね」。真央さんには「練習できる天才」という評価があります。「跳ばずに勝っても、ちっともうれしくない」と言って、大技であるトリプルアクセルを失敗しても失敗しても、挑戦し続けました。それは選手寿命を縮めるほどの、技術的にも体力的にも、負担の大きなものでした。それでも確固たる信念と勇気をもって練習に励み、自分で納得できるプレーを目指したのでしょう。

 一流選手はその華やかさが目に付きます。しかし、花が咲くまでの間に、どれだけの苦労があったことか、何度失敗を重ねたことか。それにめげずに諦めずに挑み続けなければ、一流にはなれないないのでしょう。先般のソチオリンピックで、真央さんはショートプログラムで、まさかの16位と出遅れてしまいます。それでも諦めずにフリーでは渾身の演技で自己最高得点を出し、6位まで順位を上げて、世界から称賛されました。失敗がないから一流ではなく、失敗を乗り越えられるから一流なのだということを教えてくれました。

 彼女自身も引退の会見で、最も印象に残る演技だったと振り返っています。そして「生まれ変わってもフィギアスケーターになりたいか」という質問に対して、大方の期待を裏切り、「すべてやりきって、なにも悔いはないので、スケートの道にはいかないと思う」と答えています。

 今、境内の桜は散り始めました。咲いた花はいつか散るのが定めです。だから咲く時は精一杯咲いていたい。みんなに愛でられるようならなお結構です。真央さんの「悔いはない」という潔い花の散り方は、日本人好みです。日本人好みの顔立ちと笑顔は、もしかしたら天性のものかもしれません。その天性は、日本人好みの常に精一杯咲き切る桜のような生き方によって、より一層磨かれたような気がします。

 それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

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