法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第1051話】 「りんごのきもち」 2017(平成29)年3月1日-10日

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1051_15.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1051話です。

 戦後最初のヒット曲と言われる「リンゴの唄」。復興のシンボルとなった歌です。そして、山元町の特産品のひとつにりんごがあります。そんなことから高橋厚さんは、東日本大震災発生からわずか11日目に立ち上げた災害臨時FMラジオ局を「りんごラジオ」と命名しました。始まりは町役場の玄関の一画です。被災者がごった返す中で、高橋さんはマイクに向かい続けました。

 高橋さんは、元東北放送のアナンウンサーでした。退職後たまたま町内に移住して暮らしていたのです。それまでのアナウンサーの経験と人との縁などが、いち早い開局につながったのでしょう。そして、混乱している時こそ、正確な情報を伝えなければという放送人としての使命感を実現したのはさすがです。

 当時の山元町は外からの情報も入って来なければ、こちらの情報も外に発信できていないという孤立感がありました。そんな時りんごラジオは、町の被災状況や生活情報を伝えてきたのです。そして緊急事態が過ぎて復興に向かう過程においても、町民の声を掬い上げてきました。悲しい話もうれしいことも、分け隔てなく採り上げ、町民に寄り添ってきました。高橋さんは町民全員にマイクに向かってもらうことが夢だと仰っていましたが、果たして目標は達成できたのでしょうか。

 残念ながら、りんごラジオはこの3月末で閉局になるというのです。公設民営で開局し、数度にわたって放送免許を更新してきました。しかし町としては、昨年12月にJR常磐線が運行再開するなど、復興に一定程度めどが付いたので、閉局を決断したということです。

 私はりんごラジオで月1回「文明和尚の作務タイムズ」という番組を担当してきました。実はそれ以前に、高橋さんとは出会っているのです。今から35年前の昭和57年、東北新幹線開業記念の歌の募集があり、私の応募した『故郷は僕に微笑む』という歌詞が、入選して郷ひろみが歌うことになりました。その発表会での司会が、東北放送のアナウンサーだった高橋さんでした。壇上で入選の感想はとインタビューされました。「僧侶として修行中の私の頭と同様、東北は今後ますます輝いてほしい」と答えたことを覚えています。確かに東北新幹線の開業は、新しい東北の幕開けを告げるものだったような気がします。

 今、町は復興の姿を現しはじめ、りんごラジオは姿を消そうとしています。今度は私が高橋さんにインタビューしたいところです。「町の復興についてどう思いますか」。高橋さんは「りんごラジオは十分に役目を果たした。もうりんごは何にもいわない」と言うでしょうか。町民全員でりんごの気持をよくわかって、おかげさまでここまで来ました、ありがとうございますと、合掌の手をマイクに見立てて、御礼の声を届けたいものです。

 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

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