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【第1040話】 「千の路」 2016(平成28)年11月11日-20日

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1040.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1040話です。

 「おらが町六年振りに常磐線どんな顔して通るか見たし」11月6日の河北新報の歌壇に掲載された短歌です。作者は檀家の島田啓三郎さんで、東日本大震災で家を流されました。流される前は庭先を常磐線が走っていました。その同じ新聞の第一面に「常磐線再開へ 試運転を開始」との見出しが躍り、高架式になった線路の上を試運転するJR常磐線の車両の写真が載っています。

 わらが町山元町の常磐線は海沿いを走っていたため、大震災の津波で甚大な被害を受けました。駅舎や線路が流されるなどしたので、現地復興をあきらめて、内陸移設工事を進めていました。最大で1キロメートルあまり内陸に線路は移設され、新しい駅の周りには家を流された人々が移り住む町が建設されています。12月10日の運転再開が決まり、11月5日に試運転が始まったのです。

 思えば、平成26年7月22日に私は線路移設工事に伴う町内初の鉄道トンネルの工事現場にいました。海から約2キロメートルの小高い戸花山の麓です。そこまで津波は来ました。というよりそこで津波は止まったというべきかもしれません。あたりは何人もの犠牲者のご遺体が発見されたところでもあります。そんなこともあり、犠牲者のご供養をしてから、トンネル工事を始めたいということで、工事関係者から読経を依頼されたのです。

 読経の後で参列者の方々に次のようにお話しました。「大震災では、この町の人口の約4パーセントに当たる方々が犠牲になりました。恐れを知り、人知の及ばぬところがあることを悟らなければなりません。曹洞宗をお開きになった道元禅師は、中国での修行を終えて日本へ帰る船上で大嵐に遭いました。その時声を限りに『観音経』を唱えたそうです。――惑漂流巨海(わくひょうるーこーかい) 龍魚諸鬼難(りゅうぎょしょーきーなん) 念彼観音力(ねんぴーかんのんりき)波浪不能没(はーろうふーのうもつ)――(大海に漂い、龍のような魚や鬼に襲われても、観音の力を念ずれば、波の中に没することはない)するといつの間にか、波の上に白衣の観音さまが現れました。船上のみんなが無言で手を合わせると、風はおさまり波も静かになりました。道元禅師が仏法を伝えたい一心で、観音の力を念じて大嵐を乗り越えました。私たちもこの困難を乗り越えて復興へ向かおうという一念です。その象徴として鉄路の復活があります。生きている者が幸せであれば、亡き人も安心できます。そのためにも、一日も早くトンネルが開通できますようご尽力をお願い申し上げます」

 復興へ向かう被災地の人々の篤い想いが、建設現場の人々の背中を押したのでしょうか。当初の計画より3カ月以上も早く列車が走ることになったのです。千年に一度と言われる大震災、そこを乗り越えて走る線路。ここで線路は「千の路」と書き記したいくらいです。千というたくさんの可能性に続く路という意味で・・・。

 ここでお知らせ致します。10月のカンボジア・エコー募金は、218回×3円で654円でした。ありがとうございました。
 それでは又、11月21日よりお耳にかかりましょう。

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