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【第1039話】 「先生がいなかったら」 2016(平成28)年11月1日-10日

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1039.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1039話です。

 「もし、先生がいなかったら、児童は死ぬことはなかった」これは、石巻市立大川小津波訴訟における原告遺族の訴状に書かれている文言です。東日本大震災の津波で、児童74人と教職員10人が死亡・行方不明になり、児童23人の遺族が訴えていました。先月26日に仙台地裁で判決が出ました。

 「教員は津波の襲来を予見でき、不適切な場所に児童を避難させた過失がある」として、市と県に総額約14億3千万円の支払いを命じました。たとえ想定外の災害が起きても、教員は最大限の対応で子どもを守らなければならないという、学校側にとっては厳しい指摘がなされました。遺族の言い分は、児童を校庭に50分近くとどめ、津波が迫る川の方に誘導した学校側の対応が問題なしとされては堪らないということでしたので、その思いは汲み取られました。

 学校の責任が明らかになったものの、まだ明らかにされないこともあります。それはなぜ裏山に逃げずに、川に近い「三角地帯」に向かったのかということです。裏山は津波から逃れるのに十分な高さで、児童が過去にシイタケ栽培で登ったこともあり、歩いて数分で避難できたはずだとの遺族の指摘があります。

 更に先生の存在について、こんな見方も裁判で言われています。校内にいた先生がたった一人だったら結果は違っていただろう。教師間のあつれきや学校組織を覆う「事なかれ主義」のようなものが、危機での判断を誤らせたのではないかという遺族の思いです。現場にいた教職員で唯一生き残った男性教諭の証人尋問が叶わない時点で、この思いは想像の域を出ない話です。まさか我が子が学校でしかも先生の指示に従ったが故に、命を落とすという無念さから発せられたものでしょう。

 しかし、どんな先生でも児童と共に、わざわざ危険なところに向かうはずがありません。ただ大川小の場合は、とっさの判断ではなく、50分近く校庭にとどまっている間に、先生同士で何がしかの意見調整があったかもしれません。調整はある程度にして、もっと動物的な危機感覚を働かして、素早くみんなを誘導するリーダー的存在の人がいなかったのでしょうか。もっともすべては今だから言えることです。もし自分が先生の一人としてその場にいたらどう判断をしたかと言われれば、まったく自信がありません。自信をもって的確な判断を下すためには、常日頃の準備が欠かせません。備えあれば憂いなしの如く、学校一人が責任を負うのではなく、地域全体で危機に備える意識が大切です。津波は学校だけを襲うわけではなく、また大人も子どもも命はひとつしかないのです。「先生がいなかったらたいへんだった。すべて先生のおかげです」お互いがそのように思える故郷にしていかなければ、大川小で亡くなった尊い命が浮かばれません。

 それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。

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