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【第1024話】 「仏ごころ」 2016(平成28)年6月1日-10日

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1024.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1024話です。

 想定外の東日本大震災は、更に人智の及ばぬ東京電力福島第一原発事故をもたらしました。当時アメリカのホワイトハウスは3月16日時点で、原発から80キロメートル圏内にいるアメリカ人は避難するようにという勧告を出しています。日本は20キロメートル圏内の人の避難と、20-30キロメートル圏内の人は屋内避難などと言っている時です。核に対する恐怖は、日本よりアメリカの方が敏感だったような気がします。

 その敏感さが伏線にあったのでしょうか。ホワイトハウスの主であるオバマ大統領が、現職のアメリカ大統領としては初めて被爆地・広島を訪れました。先月27日のことです。伊勢志摩で開かれた主要7カ国首脳会議を終えて、帰国の途に就く途中における訪問でした。広島に滞在した時間は1時間足らずではあったものの、歴史的出来事です。世界で唯一の被爆国日本、そして世界で唯一の原爆という武器を行使した国アメリカ。71年の歳月を経て、両国が広島に集う意義は、「核をなくするため」それ以外にありません。

 石油や石炭を「平和利用」するとは言いませんが、核の場合は「平和利用」という断りをすることがあります。平和利用しなければ、広島や長崎の悲劇を繰り返すことになるからです。しかし、平和利用しても、福島第一原発事故然り、チェルノブイリ事故然りで、絶対の安全はありません。そしてひとたび事故が起これば、取り返しがつかなくなります。人命は勿論、自然界に及ぼす影響は計り知れません。

 宗教の原点は恐れと懺悔ではないでしょうか。ホワイトハウスは核の恐ろしさを知っていたから、いち早く避難勧告を出しました。それ以前にホワイトハウスの人々は、神を恐れる気持ちを常に抱いていたはずです。事実、オバマ大統領は就任宣誓の時、その夫人の持つ聖書の上に左手を載せて、職務遂行を誓っています。完璧な人間でないという自覚があればこそ、神に対する恐れが生まれます。また、完璧な人間でないから過ちを犯すこともあります。しかし、恐れを持つ人は過ちを懺悔して、明日に向かうことができます。

 オバマ大統領の広島での17分間に及ぶ挨拶の結びはこうです。「私たちが選ぶことができる未来。それは広島、長崎が核戦争の夜明けではない未来」と言っています。原爆投下は神をも恐れぬ所業(しょぎょう)に等しいものです。それを懺悔して初めて、ほんとうの未来に向かうことができます。懺悔するには勇気が必要でしょう。その勇気は、核が出現する前の穏やかな日常生活を想像すること、それらが一瞬にして奪われてしまう非日常を想像すること、その想像力によってもたらされます。それはすべての宗教が唱える慈しみの心です。私たちは仏ごころとも呼んでいます。広島にも長崎にもそして福島にも、仏ごころで寄り添い続けなければなりません。この世に核がなくなるまで・・・。

 それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。

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