法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第987話】 「命名」 2015(平成27)年5月21日-31日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第987話です。

 落語の「寿限無」は、男の子を授かった父親が和尚さんに命名を依頼します。とにかく長命であるような名前をということで、候補に挙がったものを全部付けてしまいます。「寿限無 寿限無 五劫の擦り切れ云々・・・」という名前で、実に130文字もあります。

 さて、海の向こう英国では、5月2日にウィリアム王子とキャサリン妃の間に、第2子の王女が誕生しました。シャーロット・エリザベス・ダイアナと命名されました。シャーロットは「可愛らしい」とか「女の子」という意味があるそうですが、祖父にあたるチャールズ皇太子のチャールズの女性形でもあります。エリザベスは現女王ですし、ダイアナはご存じのように、ウィリアム王子の亡くなった母の名前です。「寿限無」の父親ならいざ知らず、日本では考えられないような高貴な名前のオンパレードです。

 そんな日本だからでしょうか、大分市の高崎山自然動物園で、生まれたばかりの赤ちゃんザルに付ける名前を公募したところ、「シャーロット」に決まりました。ところがそれに対して、英王室の王女と同じ名前をサルに付けるとは「王室に対して失礼だ」との批判が殺到しました。これに対して、動物園側は、撤回を含めて協議をするとの謝罪文書を発表する騒動にもなりました。当の英王室は「どんな名前を付けようと動物園の自由です」という鷹揚な態度でした。結果として名前の変更はなく、赤ちゃんザルも「シャーロット」と呼ばれることになりました。

 高貴な方に対する畏敬の念を示すのは大切なことです。しかし、変にかしこまって遠ざけてしまうより、親しみを込めた対応も必要です。その意味で、赤ちゃんザルにも王女と同じ名前を付けることで、王室に対して近親感を抱きたいとの思いもあったのではないでしょうか。問題は最近の日本人の批判精神です。大局的な見方ではなく、自分たちだけの狭い価値観で、物事を批判しがちです。更には、ネット社会の弊害でしょうか、それを煽るが如く、我も我もと同調する人が出てくることです。それが報道されると尚のこと、世間は騒ぎ立てます。そして「炎上」などと言う思いやりのない言葉で一括りにされてしまします。

 生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で名前を付けることができません。誰かに命名されるのです。そしてひとつの命が、社会的にデビューすることになるわけです。まさに名前は命です。私たちがいただいた名前は、信念をもって付けて下さったはずです。因みに「寿限無」は『無量寿経』というお経から付けたものだそうです。お経は尊い字のオンパレードです。みなさんの名前の字もお経の中にあるかもしれません。とすれば、名前に恥じない生き方をしたいものです。「炎上」のネタにならないためにも。

 それでは又、6月1日よりお耳にかかりましょう。

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